第2話 飛行機

ベンチに座り、ため息をついた。

やっぱり私には向いてないんだ。


おろしたてのスカートを見下ろし、頭を抱えてうなだれる。


休日に幕張メッセで行われる就活合同セミナーへは来たものの、会場内の人の多さと熱気にやられ、開始早々に外へ避難して来た。


中ではなおも、熱意溢れる企業のプレゼンが繰り広げられ、首を縦に振りながら、一心不乱にメモをとる集団で埋め尽くされているのだろう。


もう一度、ため息をつく。

やらないといけない事だとは、頭ではわかっている。


社会的な地位、安定した収入、やりがいのある仕事。


私のやりたい事ってなんだろうなー。


頭を抱えるのは辞めて、大空を見た。何も悩みがないかのごとく、真っ白な雲が流れていく。


時折、成田空港へ向かう飛行機が上空を優雅に飛んでいるので、行く末を目で追う。


「キミ、ここで何してるの?」


視界を若い男の顔が覆った。


「わっ!」

私が慌てて仰け反ると、若い男は両手を合わせて謝った。目が細く、開けているのか閉じているのかも曖昧な糸目をしていた。


「ごめんね、驚かせた?」


言葉には申し訳なさのカケラもなかった。

いきなり現れた人物から少しでも離れようと、ベンチの端まで身をずらし、移動する。


不意打ちで驚いたが、冷静になって男を見ると、全身水色のスウェードのスーツを着ていたので、さらに驚いた。


「キミ、就活生?」

水色の男は指で幕張メッセを指した。

手には白い手袋がはめられている。


問いに対して頷いてしまったが、目の前の男は怪しすぎる。


「そうか、良かった!」


何が良かった!なのだろうか?

鞄を掴んで立ち上がろうとすると、水色の男は右手をスーツの内ポケットに手を入れた。


「キミみたいな人を探していた」


ピストル型に差し出された右手の人差し指と中指の間には名刺が挟んである。



「うちの面接受けてみない?」







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