第2話
駅に近づいたあたりから変だった。
外に出るのが久しぶりすぎて駅までの道を間違えたのか、体力が低下しすぎて自転車をこぐのが遅いだけなのか、なかなか駅に着かない。
おかしい。
この道は知っているはずの道なのに、あの角を曲がれば駅が見えるはずなのに、その角が全然見えてこない。
通り過ぎたか?
ん?この角か?この角だな多分。
あぁこの角だ。
駅は見えないけど。
・・・さっきから人と全くすれ違わないな。
気のせいかずっと地面が小さく揺れている気がするし。
そうだコンビニに入ろう。
いい加減ちょっと寒くなってきたし、コンビニで道を聞けばいいや。
トイレもしたくなってきたし、何か温かい飲み物でも買おう。
・・・あら?あのコンビニ潰れたんだっけ。
老人ホームになってら。
割とでかいコンビニだったんだけどなーははは。
・・・いやいやいくら準引きこもり状態だったとはいえ天性の方向音痴だとはいえ近所で遭難なんかするはずがない。
と、とにかく人がいないのがおかしい。
誰でもいいからあって話したい。
そうだ、スマホのマップを見よう。
いやその前にあいつに遅れるかもって連絡しないと。
俺はスマホをとりだ・・・そうとして誤ってコンクリートの上にスマホをダイブさせてしまった。
俺のスマホは無残にも縁から中央に向けて数本の亀裂を走らせて画面を点滅させていた。
液晶が死んだようだ。
タップしても反応を示さない。
詰んだか、俺の人生。
いやまだ諦めるな。
とにかくそこの家の人に道を聞こう。
自転車を電柱に立て掛けると(ロードレーサーのためスタンドはない。ちなみに兄貴の)民家のインターホンを押す。
ピンポーン「ごめん下さ〜い」
・・・ピンポーン「ごめん下さ〜い」
・・・隣の家だ。
ピンポーン「ごめん下さ〜い」
・・・ピンポーン「ごめん下さ〜い」
・・・と、隣の家だ。
ピンポーン「ごめん下さ〜い」
10軒目ぐらいでこれが異常事態であることに気付く。
そういえばどの家も明かりがついてない。
そして周囲から音がしない。
え?あれ?俺、ぼっち?
足が震える。
視界も震える。
なんだか頭がクラクラしてきた。
というより、グラグラしてきた。
瞼が重い。
眠い。
寝る。
ズシン
遠くで大きな音が聞こえる。
ズシン
・・・?近づいてきてる?
ズシン
もしかしたら工事の音かも・・・!
俺は地面から起き上がると(いつのまにか気を失っていたらしい)、音の方へ走った。
久々の激しい運動に体がついていけるはずもなく100メートルぐらい走っただけで早くも口の中が血の味がしてきた。
ドォン!
音が大分近くなった。いや、すぐそこか!
あの角を曲がったところだ!
ん?あの角、曲がったら駅が見える角じゃん。まちがいない!
やった!とにかくこの角を曲がれば
ドッ!!
・・・どうやら何かと思いっきりぶつかったらしい。
なんだ?
「え?」
二人同時に叫んだ。
女の子だった。
女子高生だった。
しかも、知っている顔だった。
向こうもかなり面食らっている様子だったが、すぐに体勢を立て直して俺の来た道を走り出した。
「おい、ちょっと・・・」
振り向きもせず彼女は疾走する。
そんなに俺と会いたくなかったのか?
まあいいやなんとか着い
ズドン!!!
ドラゴンだった。
そう、誰もが想像できるカードゲームやアニメや映画に出てくるようなあんなドラゴン、それが俺の目の前にいた。
夢だな。
まちがいない。
そもそもせっかくの休みだってのに一日中家で寝てるような奴に友達から連絡がくるはずないじゃないか。
その上近所で遭難してさらに初恋の相手といきなり再会して、挙げ句の果てにはドラゴンとご対面?
なにを馬鹿げた
ズドォン!!!!
さっきまでの音がドラゴンの足音だったことに気付きつつ、俺は身を翻して元来た道を全力疾走した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます