背徳 Diana ' s prank

moco

scene 1



「月がきれいですね」


わずか八文字のコメントを見て、あわててベランダに出た。


十六夜の月が、たゆたゆと暗闇の中に浮かんでいる。

ソファーに置いてきたスマホを取りに戻ると、もう一度ベランダに。


漱石だ。


あの人は、私のことを文学少女だったと思っているのだろうか?

それとも、こんなこと、文学に興味がない人間でも、みんな知っていることなのか?


「月がきれいですね」


彼の八文字を読み返す。


゛I love you too.゛


想いを込めて、たったの十文字を返す。


『はい、とてもきれいです』


なぜ、ベランダで打っているのだろう?

こんな背徳は、かわいいものじゃないか。


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