「連絡先」


「やっほ~」


いつものようにゆっくりドアがあいて

気兼ねなく入ってくる

彼が来た!それだけでテンションは最高に上がっていた。


運良くその日はママも先客がいたので

今日は彼と1対1で話せる日だった。

そう、何気に初めてふたりで話すという。


ずっとママやお姉様方が付いてくださってたから

正式には今日が初。


前回の時、励まそうとしてたとは言え

また人見知りが発揮してしまい

まったく目を見て話せなかった。

その上、何故かコスプレして遊んでいた。

ナース服を着せられた私は非常に恥ずかしくて

本当に顔すらあげれない状態になっていて

彼と写真一緒に撮られたりしていた。

ママに「アヤトとまったく目合わさないねリサちゃん」と

突っ込まれた拍子に


「いや…そんなに仲良くないですし…」


と言ってしまったのが割と本気で傷ついたらしく

彼が席に着いたのでおしぼりを渡しに行くと


「リサちゃんに前回仲良くないって言われた~」


と冗談なのか本気なのかわからない冗談まじりに話しかけてくれた。

それがきっかけになって

初めてひとりで付いてこんなに話せたってくらい

マシンガントークだった。


彼とは、幸運なことに趣味が似ていた。

好きなアーティスト、アニメ、漫画、ゲーム

ふたりとも言わば二次元文化が大好きで

こういった趣味をもった人とは中々出会えないもの。

だから、趣味が共通して

お互い余計に壁があったのがなくなった。


カラオケも、お互いが好きなアーティストの曲。

やんや やんやとはしゃいでいた。


「まじでこんなにも話し合うとは思わんかった!」


彼もびっくりしていたけれど

楽しんでくれていた。


彼はお店の女の子が目当てなんではなく

この店の雰囲気が好きできてくれていた。

女の子みんなに優しくて

誰がついても気を使って女の子を話しやすいようにしてくれて

だから誰がついても楽しそうにしていた。

キャストの女の子も顔負けなくらい。


その日はお店が繁盛して

後半はゆっくりと話をすることができなかったけれど

勇気を出して、連絡先を聞いてみた。


「よかったら、連絡先教えてよ」


もちろん断られるかもしれないと思ったけれど

そんな不安はお構いなしに


「全然教える!」


と、即答してくれた。


連絡先を交換してすぐに

お互いが好きなアニメのスタンプや

適当な文字を送りあったりしていた。

それだけでもすごく嬉しかった。


こんなに異性と気が合うのは初めて。

こんなに積極的に連絡先を聞いたのも初めて。


いつのまにか、彼がお店に来るのも

彼から連絡が来るのも

楽しみになっていた。

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