as ever..
リサ
「はじめまして」
出会いは魅力的なものではなかった。
いつも通りお店に出勤してきて
お客様を待つ。
オープンしてからお客様がご来店。
私はこの店に入りたての新人。
ご来店されるお客様は、みんな初めまして。
今日もまた、はじめましてのお客様。
その人の隣には、うちの店のママが付いていた。
スナックといえど、ママは20代後半の若いママ。
とてもかわいくて色気のある方だった。
そんな私は、対面に付かせてもらい
いつも通りお酒を作っていた。
「初めましてやな」
すごく優しく話しかけてくださったのを
今でも覚えてる。
こういったスナックなどは
気性が荒いお客様も多い。
優しいお客様の方が稀だったりする。
「初めまして」
ぎこちない作り笑顔だったんだろうなと
思い返すことは少なくもない。
すると隣に座っていたママが口を開いた
「この間うちに入ってくれたリサちゃんだよ。仲良くしてあげてね!」
当時は何もわかっていなかったから
ママに自分のことを紹介してくださって
話が進むきっかけができた。
「アヤトです。よろしく」
「リサです。こちらこそ」
そんなぎこちない会話を
しばらくしていた。
ふと目に付いた彼の手。
そう、当時は彼の左手の薬指に指輪があった。
「ご結婚なさってるんですか?」
不躾にも聞いてしまった。
夢を見せる時間で、現実感のある会話は
あんまりよろしくない。
それでも自然と聞いていた。
「結婚はしてないよ。彼女は…いる…んかな」
はっきりと「いる」とは言わなかった。
「喧嘩してるとか…?」
「ん~…なんて言うたらいいんやろな」
「まあ、いろいろあるよね!そんなことよりも飲もう飲もう!」
隣にいたママがかばうように
横から会話に混ざってきた。
聞いてはいけない話題だったのかな、と反省し
違う話題を話そうとしていた。
しばらく私は何も話せずに、ママと彼の会話を
相槌を打って聞くことしかできなかった。
そんな中、突然こんな話題が出た。
「もし、ふたりとも2年後くらいに相手がいなかったらさ…結婚しようね」
ママが彼にこういった。
カウンター越しに見る光景は、恋人そのもの。
今思えば、こんなのホステスからすれば
仕事の一環でしかなくて
お店ではよく見る光景。
当時ママもいろんなお客様に言ってたセリフでもあった。
でも、何を思ったのか私は
「ママいろんな人に言ってますねそのセリフ。」
と、ありえないご法度なことを
目の前で言ってしまったのだ。
別に悪気はなかった。本当に純粋にそう質問してみた。
彼は「なんだ、誰にでも言ってんの?」とママに笑いながら言い
「リサちゃん!そういうのは言ったらだめ!」と
笑いながら怒られた。
夜の世界って難しいな。
そう反省していた。
今思うと、本当に馬鹿だったなとおもう。我ながら。
でも、それが
始まりのスイッチでもあったりした。
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