第2話■出会い1

誕生日の日でさえも俺はバイトがあった。

いつも通り電車で向かっていたのだが、

バイト先の最寄りに着いた途端、扉が光った。


「"え!?みんなこれ気付いてないのか!?"」


そう、他の人は普通に扉を通って

ホームへと足を下ろしている。

なぜみんなは驚かないのか。

これは俺だけに見えているのか。

そう素直な感想だけが頭に過ぎる。

その瞬間、扉から手が出てきた。


「"!?!?・・・"」


俺はその手に右手を掴まれ、引きづりこまれてしまった。

何が何だか・・・思考が追いつかない。

扉の中に入るとそこには、

天使がいた。

絶世の美女だった。・・・・・・





















ってなれば最高だったんだけどね。そこは不幸オーラの濃い俺だ。

そんなことはなかったと思わせるほどのことが起きた。

そう、おっさんがそこにいた。


「"え・・・おっさんかよ・・・

なんで天使とか神とかそういうんじゃなくておっさんなんだよ・・・"」


そのおっさんは、現世でいう和室に、丸型のちゃぶ台、

座布団の上に正座でお茶をすすりながらみかんを食べている。


「"えぇー・・・"」


その一言に尽きる。

おっさんはなにかあるわけでもなく、くつろいでいるのだ。

俺も現世では趣味がなかったわけではない。

12歳の頃、両親が亡くなりそれから引き篭もってしまった俺が、

唯一癒しになっていたのがアニメや漫画や小説。

今の今まで、それで精神を助けられたといっても過言ではない。

なので電車の扉が光って手が出てきた時は、


「"おっとこれは女神が出てきて異世界に飛ばされるんじゃねーか!?

神は俺を見捨ててなかった!!!!"」


とか現実逃避くらいはしていたのだ。

なのにこれだ。

なんだこれ。俺の現実逃避【夢】を返せよ!!!

期待した分くらいは返せよ!!!

・・・おっと取り乱してしまった。気を取り直して、

とりあえず状況を確認するために話しかけてみよう。

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