毎日diary
マメツブ
1月1日 初詣
「暇だねー」
「だな、人多いし」
俺と、俺の隣で「にへへっ、だねー」と呑気に笑う彼女は、今。
年明け早々の大イベント。
初詣へと来ていた。
☆☆☆☆☆
「私達同じ大学行くための計画のフィニッシュとして神頼みに参りましょう!」
そんな彼女のこんな妄言に連れられ。
俺とその彼女は1月1日の新年早々、参拝の大行列に紛れて御礼参りへと来ていた。
「暇暇だねー」
「それさっきも言ったろ」
「さっきは暇って言ったんですぅ、だ」
「へいへい」
そんな感じの会話を俺と彼女が交わしている間にも、俺達の前に並んでいる参拝者達は次々と参拝を済ませて行き。
到頭俺達の番になった。
「じゃ、さっさと済ませるぞー」
俺が言って、参拝の鐘に繋がる綱に手を掛けようとする。
─────と、掛けようとした手が綱の直前で普通で塞がれ。
「たんまっ!」
彼女は、悪戯っ娘のような笑みで微笑んでそう言った。
俺は半ば呆れ気味に彼女に問う。
「何がだよ」
彼女はそんな俺の問いに「待ってました」と言わんばかりの顔で言った。
「御互いに、神様へのお願い事を口に出しながらお願いしよ?」
なるほど。
否でも。
「神様へのお願いって、もう決まってんだろ?大学合格成就って。だからわざわざ口に出さなくてもいいんじゃ────」
「何でも良いから兎に角口に出すのーっ!」
俺の反論を遮って彼女が「ぷーっ、ぷーっ!」と頬を膨らませて言った。
はぁ。
こうなった彼女にはもう従う他無い。
こいつ、こう見えて変なところで譲らない頑固なやつなのである。
仕方無いか。
俺は「へいへい、言えばいいんでしょ、言えば」と半ば呆れ気味に言って鐘に繋がる紐に手を掛けた。
「うむ、よろしい」
彼女はそう満足気に言うと俺と同じく紐に手を掛けた。
そして二人同時に揺らす。
「かららんころりろん~」
「鐘はそんな音を鳴らしていないだろう」
「良いじゃないかー」
そんな感じに鐘を鳴らし終え。
ぱん、ぱん。
手を合わせた。
「憎たらしい小娘と同じ大学に行けますように」
俺が言ったのを聞き彼女は頬を膨らませる。
が、何も言わず静かに言った。
「隣に居るバカ野郎君と、この先ずーっと幸せでいられますように」
「バ、バカはお前だ!何言ってんだよこんなところで、し、幸せとか…………」
「何のこと?」
彼女は言って「へ?」と首を傾げた。
ったくこの天然は。
ずーっと幸せで、とか。
そんなの。
まるで。
─────彼氏と彼女、みたいな台詞じゃないか。
「次いいですかー?」
「あっ、すみません………バカ野郎ー、早く行こ行こー!」
「………お、おう」
そんな感じに、俺と彼女の初詣イベントは幕を閉じた。
………ったく、後で覚えておけよ、天然が。
この恥は必ず仇で返してやるんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます