第2話 帰り道


にこやかに娘を幼稚園へ送り届けたものの、帰り道、下り坂をゆくスピードがこころには速すぎて、深くどこかへ沈んでいきそうだった。


まさか、彼に裏切られる日が来るとは…。

…。

「まさか」、本当にそう言うべきなのだろうか。

「まさか」でなくて、「やはり」…ではないのか。それとも、「ついに」…、というべきなのではないか。


彼に裏切られる、こんな日が来てしまった。

いや、彼なら裏切り兼ねない。


裏切りながらも彼は、こんなにもにこやかに、何事もないかのように、家族に振る舞えるものなんだ。

いや、家族だからこそ、そう振る舞えるのか。

恋愛中なら、

もしくは私が、彼にとって少しでも彼女という存在なら、こんなにこやかにできるはずはないだろう。

もう彼女でもなく、家族だから、ああやって別物ののように、合理的に考えて接することもできるのかもしれない。


頭の中で思いは混乱し、考えることも重く絡み付いてくる。



そもそも、私は娘が産まれてからというもの、彼に愛されてきたんだろうか…。 



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