第5話 密談
その子もトイレに行きたいはず!
かわいらしく主張して、何とか三人きりで集まることができた。
「初めまして、八条那毬です」
「どうも、夜鳥留です」
「…あ、えっと、北原誠です」
少年が頭を下げる。
「なんとなく察しはついてるし、そっちもついてると思うんだけど」
「子供の姿になってる。でも、大人の記憶は引き継いだまま」
「そう。置かれた状況を説明するわ」
そうしてなるべく手短に現状を伝える。トイレと言ってきたのだ、あまり時間はない。
「つまり、そっちのどっちかがおまけで、おまけは命が危ない、と」
「そう。で、こっちの提案なんだけど」
留が考えていたことを話す。
「なるべく三人で行動する。ことがはっきりわかるまでは、子どものふりをする。その方が相手から情報を得られやすい」
「子供だと思って油断するしね」
「能力が発現しても、三人の能力がわかるまでは彼らにばれないようにする」
そうすれば、彼らもうかつに間引くことはできない、はずだ。
「情報が欲しいわ。怪しまれない程度に、情報を集めなきゃ」
「わかった、協力しよう」
「彼らもバカじゃないだろうし、すでに那毬か私のどちらかがおまけ…いえ、魔王側のスパイと考えているかもね。あなたは身の安全が保障されているから、本当はこんな、こそこそしなくていいんだけどね」
留が苦笑を漏らすと、誠は首を振った。
「いや、まだ誰が、何が正しいかすらわかっていない状況だ。信じられるのは、この三人だけと考えていいだろう」
「あら、私たちを数に数えてくれるのね」
「あぁ、まぁ人を見る目はある方だ」
遠くで神子様と呼ぶ声が聞こえた。
「タイムリミットね。まだ彼らに自己紹介してなかったわ、そういえば」
「あ、忘れてたね」
「俺は暇がなかった」
起きて早々、トイレだなんだと言われ、人けのない場所に連れてこられたのだ。
「じゃあ戻ったらまず、つたない子供らしい自己紹介ね」
「そうだな」
「よろしく―。私人見知りなんだよねー」
「こら、留!」
そうして、三人は声のする方へと戻って行った。
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