俺ストーリープロジェクト

宮澤リョウジ

あの日

友人は東日本大震災の発生した時、山手線某駅前のラブホテルでデリヘル嬢を待っていたそうだ。


その日と翌日は久しぶりの連休で、M性感のソフトMコースで予約し、ウキウキしながらホテルで嬢を待っていた。

例の地震が発生し、大きな揺れと共に友人は「これは避難した方がいいかもしれない」と部屋を出ると、外で指名したデリヘル嬢が腰を抜かして座りこんでしまっていた。


半泣きになって動けない嬢のそばで「大丈夫、怖くないから、そばにいるから」と手を握って励まして、彼女が落ち着くのを待った。「俺はいじめて欲しかったんだがなあ」と内心思いつつ。


幸い、ホテルでの被害はなく、嬢が落ち着いた所で帰ってもらった。当然この日は店には支払いはなかったが、彼は店がキャンペーンでやっていたホテル代キャッシュバックの三千円をちゃっかり貰って帰路についた。


電車がことごとく止まっていて、しょうがないので彼は3時間かけて歩いて帰った。帰ってニュースを見て初めて、被害の重大さに気付いたそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る