第35話:幽霊長屋

「私が…… あの川に身を投げようとしたのを見掛けた方がいた所為せいでしょう」


 お里は絞り出すような声で話し始めた。



「うゥ…む、川に身を……」

 源内も身を乗り出した。


「はい……」

 まるで、お通夜のようなしんみりした雰囲気になった。


 その川と言うのが、その昔、子供が柿の木から柿を取ろうとして落っこちて亡くなりまして……。


 その子供の亡骸を抱いてと母親が心中を試みたって、いわくつきの川でして……



 以来、柿の木長屋には子供を抱いた母親の幽霊が出るって噂になり、それが元で幽霊長屋と言われてきた案配でして……

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