第4話:艶噺、はじまり

「え~、元来、長屋には変わり者が多くいるモノでして……


 夜も更けた頃……


 真面目な六平ロクベーの所にコンコンと訪ねてくるモノがございました。


「ったく、何だい、この夜更けに……」


 真面目な六平は眠い目をこすりながら、木戸を開けると夜目にも白い顔の女の人が立っておりやして……。


 これが、としの頃なら、30前後、油の乗りきった良い女でして……。


 もう旦那なら絶対に放っておかない……。


 え、ああ、奥方が……?

 ハッハ、コレだから……!

 ああ、なるほど……

 そうですね……(笑)


 ま、あたしなら、絶対、放っておかない。

 良い女でして……(笑)


 真面目な六平は、目を白黒させましてね。


「あ、あの……、何でしょうか。

 こ、こんな夜更けに……」


 まさか、幽霊ではないと思いましたが……

 時が時だけに、一抹の不安がございまして……


「夜分、申し訳ございません。

 里と申します」


「お、お里さんですか……」

「昨夜、助けてもらったお礼をしなければと思った次第で」


「いえいえ、いいんですよ。お礼なんて」

 と言いながらも、お里に寄り切られる形で中へまねき入れまして……」

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