02 見えない希望

第6話

 ――喫茶ねこなべ


「亜金……

 次の魔道士試験、受かるといいな」


 玉藻が、そういうと亜金はうなずきました。。


「うん」


「お前の魔力なら大丈夫だ。

 魔力なら魔道士の私より何倍も上なんだからな!」


「次こそは頑張りたい」


「ああ!頑張れ!」


 玉藻が小さく笑う。


 玉藻は、勉強に剣術、魔術を鍛えあげ魔道士の資格を得ていました。

 強さを求めるものなら目指す場所は最強部隊ファルシオン。

 ファルシオンに入るためには、魔道士か勇者の資格か同等の実力が必要で誰もがなれるわけではありません。


「うん」


 亜金は自信はありません。

 恐らく次も落ちることがわかっていたからです。

 理由は、自分の体にあるまだら模様のアザ。

 そのアザは、人ではない証拠なのです。

 亜金は薄々気づいていました。

 自分が普通の人間ではないことを……

 そう、亜金は魔族なのです。

 魔族は、魔道士にも勇者にもなれません。

 そんな例はありません。

 見る人が見ればわかるのです。

 亜金が、人間ではないことを……

 玉藻もそれに気づいています。

 ですが、亜金なら魔道士になれると思っているのです。

 なぜなら、亜金の中身は人よりも暖かいものを持っていることを知っているからです。


「受かったら……

 デートしてやるぞ」


 玉藻は、亜金をからかうつもりで言いました。

 少しでも元気を出してほしいから……


「手つなぎデート?」


 亜金の目が真剣になります。


「え?手つなぎ?」


 玉藻は、驚きました。


「あ……なんでもない」


 亜金は、顔を赤らめ俯きます。

 変なことを言えば嫌われる。

 そんな不安がよぎります。


 しかし、玉藻が驚いたことはそのことではありませんでした。

 15歳と言えばお年頃です。

 キスやセックスに興味を持つ年頃。

 そんな年頃なのに……

 『手つなぎ』

 玉藻は、亜金が可愛く思えました。


「なんなら受かったらキスでもしてやろうか?」


 玉藻は、さらに言葉を投げかけます。


「キスは、好きな人としたほうがいいよ」


 亜金の顔はさらに赤くなります。


「亜金は、私のことが嫌いか?」


 玉藻の好奇心はさらに深まります。


「それは――」


 そんなふたりを見ている男がひとり。

 その男は、玉藻の方を見ています。

 そして、大ジョッキのビールをぐびっと飲み干しました。


「仲のいいことだ」


 男は、そう言って小さく笑います。

 そして、夜の9時を知らせるベルが喫茶店に鳴り響きます。


「あ、9時だ帰るぞ」


 玉藻がそう言って亜金の腕を引っ張る。


「あ、うん」


 亜金と玉藻は、喫茶店を出ました。

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