第3話

「……僕?僕は亜金」


 亜金は、ゆっくりと視線をその女の子の尻尾の方を見ました。


「なんだ!

 私に尻尾が7つしかないのがそんなに珍しいか?」


 女の子が、きつい目で亜金を睨みます。


「うん、ステキな尻尾だね」


「え……

 いや、そういって私をさらう気だろう!

 お前の顔はどう見ても悪者だ!」


 少女はそう言って姿形には似合わない大人が持つような刀を亜金の方に向けました。


「さらうってどうして?」


「私が珍しいからだ!

 さぁ、覚悟は良いか?

 唸れ!サメムラ!」


 少女は、亜金に向けて刀を振り上げ、そして振り下ろしました。

 亜金は、その動きをきちんと見極め、余裕を持って避けます。


「危ないよ!」


 亜金は、そう言って振り返される刀をなんどもなんども避けました。


「危ないだろう!

 私を殺そうとするやつはみんな私が殺すんだ!」


 少女は、そう言ってなんどもなんどもなんども亜金に斬りかかります。


「殺したりしないよ」


 亜金の言葉など聞く耳を持たない少女。

 やがて疲れ果てた亜金の顔にその一撃が当たろうとしたとき。

 セーラー服を着た銀髪のショートカットの少女がその刃を受け止めます。


「危ないぞ」


 セーラー服を着た少女がそう言って女の子を睨みます。


「危なくていい!

 こいつは私が殺すんだ!」


「どうして殺すのだ?」


 セーラー服を着た少女の言葉に女の子が言います。


「殺さなくちゃ殺される。

 私を狙って父上も母上も……

 兄上も姉上も殺された……

 私のせいでみんな殺されたんだ!」


 女の子は涙をボロボロ零しながらそう言いました。


「なぁ、坊主。

 名前はなんだ?」


「……亜金」


「そうか、亜金。

 お前は、この子を殺すか?」


 少女の言葉に亜金は首を横に振りました。


「殺さないよ?」


「そっか。

 それを聞いて安心した」


 少女は白い歯を見せて笑いました。


「そんなの嘘かもしれないだろう?」


「まぁ、そうだな。

 でも、本当に殺す気があるのならお前は今ごろ殺されているぞ?

 亜金の動きはその気があれば殺せる程度の力の差があった。

 まぁ、スタミナがないから避け続けるのは難しいのだろうがな。

 なぁ?お嬢ちゃん、お主の名前も教えてはくれまいか?」


「玉藻だ……」


「そうか、玉藻。

 それに亜金、お主たち私の子にならないか?」


「え?」


 亜金は、玉藻と顔を合わせ驚いた顔で同時に少女の方を見ます。


「私の名前は、清空。

 詩空 清空。孤児院の先生で院長をやっている。

 まぁ、そこそこ強いお姉さんだ」


「せんせーい」


 亜金と同じ歳くらいの女の子が、そう言って駆け足で現れます。


「シエラ……

 お前も早く走れるようになったな?」


 清空はそう言ってニッコリと笑います。


「先生にまだまだ追いつけません」


 シエラと呼ばれる少女は、銀髪の髪にショートカット。

 その髪型は清空のモノにそっくりでした。


「まぁ、私に追いつけたら一人前だ。

 そして、喜べシエラ。

 お前に弟と妹ができたぞ」


「え?おとーと?いもーと?」


 シエラの表情が明るくなりました。


「ほら、ふたりとも自己紹介をしてやってくれ」


「亜金」


 亜金が、そう言うと玉藻もゆっくりと刀を納めて言いました。


「多摩月 玉藻だ……

 でも、私は誰に子にもならない」


 玉藻はそう言って清空を睨みました。

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