かけがえのない人
誰かひとりにとってだけでいい
代わりのない人になりたかった
私にとっての母のように
父のように
父や母にとっての互いのように
妹のように
弟のように
思い出せる一番昔
父の腕には妹が
母の腕には弟が
抱かれていた
私だってたいして大きくないのに
手をつないでもらうことすらできずに
寄り添う父と母の後を
置いていかれないように
必死で歩いていた
転んだって声はかけてもらえるけれど
大きな手が差し出されることはなくて
共働きだった二人は
私達を祖母に任せることが多かったけど
祖母も泣き止まない二人に手一杯で
お腹が空いたなんて言い出せなかった
面倒くさい顔をされてからは
泣いて訴えることすらできなかった
おねぇちゃんだもん我慢できるよね
ずっと我慢してた気がする
別に愛されてなかったとか
そんなことを言うつもりはない
ご飯をお腹いっぱい食べさせてくれて
学校も行かせてくれて
お小遣いもくれて
一人部屋もくれて
清潔な洋服も着せてくれた
自転車だって買ってくれたし
部活にお金もかけてくれた
話もちゃんと聞いてくれた
でも
喧嘩をしたら怒られるのは私
真っ先に心配されるのは弟
お菓子を譲るのも私
おもちゃや人形は二人のもの
私は安い男の子の服
妹は可愛い女の子の服
親の手は二人が握っていて
私は後をついていく
母の隣に二人が座って
私は一人で向かい側に座る
二人は親と半分して
私の前にはお子様プレート
ついてたおもちゃは弟に
私のスキキライは許されない
二人は野菜が食べられない
ママ友は二人ので
私の友達なんて知りもしなかった
テレビは妹がチャンネルを握り
私の話は妹の話で中断される
眠るときは親の間に二人がいて
私は新しいシングルのベッドに眠る
妹や弟が死んだら
父や母は悲しんで泣いて
立ち直れないんだろうね
でも
私だったらどうだろう
私が一週間部屋から出なかった時
二人は気づきすらしなかったね
私が倒れた時は
流石にびっくりしてたけど
ベッドに寝かせるだけで
病院なんて考えてなかった
これが二人だったら
なんか違ったのかななんて
馬鹿なこと考えたりして
世の中
誰か一人が欠けて
回らないなんてことはありえない
そんなことは
短い人生の中で
十分理解した
だから
家族くらいには
誰かひとりくらいには
換えがきかないくらい大事にされたい
難しい願いだなんて知ってる
でも無謀な願いじゃない
どうか
私を
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