大切な人

露薫

お母さん

苦しんでることを知ってる

必死で戦ってることも

そして

もう諦めてることも


食事のたびに

薬を覚えきれないくらい飲んで

体力なんてないのに

毎日散歩で消火栓まで歩いてる

夜だって魘されて

でも

入院は拒否してる


気を使うと嫌な顔をするね

ご飯の手伝いさえさせてくれない

体のことを知られたくないって

周りに口止めしてるのも知ってる


私を笑わせようと

楽しませようと

いろいろ考えてくれるから

わたしにできることは

軽口ききながら

いつもどおり振る舞うことで


それしかできなくて


側に居れる時間も限られてるから

一緒にいてあげることすら

満足にできなくて

きっと

最後の時でさえ

間に合わないんだろう


だから、私が祈るのは

せめて

あなたがいい人生だったと言うこと

愛する人と最後の時を過ごすこと


神様、どうかこの願いを叶えてください

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