第7話;山師

源内邸では既に出立の準備は整っていた。




オレの旅に同行するのは、道案内のお蝶はもちろん、源内、城戸明日真、そしてお篠だ。



さぁ、出掛けようと腰を上げた時、

「待ってくれよ~。」と胡散臭い男が現れた。

山師の康と言う男で、源内先生の知り合いらしい。



「オレも一口、加えさせてくれよ~。」

おいおい、賭場で丁半博打を打つのと訳が違うんだ。



江戸を出れば、二度と戻れない可能性もある。


 どこで聞き付けて来たのか。怪しい。ただでさえ、山師など素性が知れないヤツだ。



 だが、源内先生の口利きじゃ、無下に断る事も出来ない。

「ハッハハ、オレに任せときゃ、悪いようにはしね~よ。」

あんたに任せたら、どう転んでも悪くなるような気がする・・・

「何だ。兄ちゃんのカミさんか。」とお蝶を見て聞いてきた。

「え、いや・・・」

「何だ。違うのか。だったら、どうだい。オレと一緒にならね~か。」

何てヤツだ。お蝶に会ってすぐ、それか・・・

お蝶はやんわり断ったが、道中、こんな感じなのかと思うと先が思いやられる。

明日真が康っさんに近寄って、

「あんた、嘗(な)めてンと、命を落とすぞ。」

「へっへ・・こっちは何度も修羅場を潜(くぐ)ってンだ。お坊っちゃんの刀遊びとは違うよ。」

「ほ~・・・、なら自分の身は自分で何とかしろよ。」

「何だい。源内先生の用心棒なんだろ。あんた。」

「先生とお篠ちゃん、それに清はオレが守る・・・」

え、お蝶は・・・

「あんたとお蝶に関しては、自分で何とかしてくれ。」

「え~、本当かよ・・・」やっさんは顔をしかめた。

「わかりました。足を引っ張るような真似はしません。」お蝶。

全く、女性のお蝶に自分で切り抜けろなんて・・・

あんたは何様だ。


こうしてオレたち一行は旅路へと出掛けた。
















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