サバイバル 2037 ~私たちと共同生活しませんか?~

青獅子

第1話

西暦2037年、日本は無政府状態にあった。




事の発端は3つある。まずは20年近く前に勃発した第三次世界大戦だ。詳しいことは大っぴらには書けないが、世界各地が戦場となった。日本も開戦直後から自衛隊を派遣し、戦闘行為にも参加した。相当数の戦死者を出したらしい。そして大戦後期にはとうとう日本も戦場となり、戦争が終結するまでの数年間で延べ5000万人以上の国民が犠牲となった。一昨年の夏に戦争は一応終結したが、結果的には全世界で数十億人の犠牲者を出すという、第二次世界大戦を超える人類史上最悪の戦争となった。


次の原因は、3年前の秋に起きた連続爆破テロ事件である。これは首相官邸・国会議事堂・与党の施設が立て続けに爆破され、結果的には総理大臣含め与党議員のほぼ全員が犠牲となった。当初は敵国の爆撃かと思われていたが、実際は大戦で敵国を支援している野党議員数十人の犯行であることがすぐに発覚、そしてその議員もすぐにテロの標的となり、最終的には与野党議員のほぼ全員が短期間で死亡した。しかし、結果的には大戦中で日本が戦場となっていることなどから、選挙すら行えなり、憲法は事実上停止された。


そして最後の原因、それは感染すると非常に高い確率で即死するという謎のウイルスである。一昨年の夏頃だろうか、やっと大戦が終結した頃に南米で発生したこのウイルスは瞬く間に世界を蝕んだ。程なくして日本でも感染が確認され、昨年末の終息宣言が出るまでに日本国内でも7000万人の死亡者が出たという。


以上の3つのことが原因し、日本は無政府状態となった。大戦で半ば壊滅状態となった自衛隊は大戦終結を機に事実上解散。そして大戦が終結し、ウイルスの終息宣言が出た現在、地方行政と警察は完全に機能しなくなり、電気・ガス・水道・交通のインフラもほとんどが停止されていた。大戦とウイルスで生き残った推定人口100万人の日本国民はそれぞれ自給自足の生活をしている。






2037年7月、俺・清原幸一きよはらこういちは大戦中にも関わらず、政府が無理矢理建設し開通させたというリニアを運転し、東京から一路名古屋に向かった。リニアは山間部に建設したということもあって被害は皆無だった。大戦が終わった現在では長距離移動の手段として活用されている。東京は無法地帯だ。ただでさえ大戦で戦場となり、半ばゴーストタウンと化している。そして、連日のように強盗や殺人が起きてはたまらない。まぁ、名古屋も大して変わらないだろうが。


東京からリニアで40分、終点の名古屋に到着した。名古屋もまだ戦争の爪痕が残っているせいか、半ばゴーストタウンと化していた。人数もまばらだ。しかし東京とは違って比較的安全そうに思えた。そして名古屋駅から2時間ほど歩く。気がつけば夕方だ。今夜はどこで過ごそう。とりあえずここのマンションで一夜を過ごすか。エントランスなら安全だろう。


俺は移動中に食品スーパーで見つけた乾パンを食べた。最近は思うような食事ができなくてお腹を空かせがちになっていたたな。そして夜、一眠りしようとすると、黒髪の美少女が階段から降りてきた。




「見かけない顔ですね、流浪者ですか?夜は危険ですので、今夜は私の家で過ごしてください。安全ですよ」




歳は中学生か高校生くらいだろうか。とはいえ大戦の混乱とウイルスの感染で学校そのものが機能しなくなったからちゃんと学校に通っているかどうかわからないけど。


他に行くあてもない俺は結局、そのマンションに泊まることにした。

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