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 白を基調としたバルジット空賊団の飛空艇は、雲よりも高いところで陽に照らされ浮いていた。そして、ずっと先に雲を突き抜けたところに、山がぼやけて見える。山頂は傘を開いたような形をしていた。


 数回、オキーフの部屋の扉を叩いたのは陽向だ。扉がすぐ開いて、オキーフが顔を出した。


「おはようございます、陽向さん。どうかされましたか?」


「どうかされましたか、じゃないぜ。泪が部屋にいないんだよ。トランクもないし。どこ行ったか知らないか?」


 慌てている陽向は、口早に言った。


「月影さんは、バル艦長と数名の部下を連れて例の祠に向かいましたが……」


 オキーフはゆっくり丁寧に伝えた。


「何で出発してるんだ? 出発には早いだろ。しかも泪一人で」


「え? 昨晩、月影さんは二人で相談して陽向さんを二番策のためにここに残すって言ってましたが、違うんですか?」


「二番策? 俺は何も聞いてないぞ。どうして俺がここに残らなきゃいけないんだ」


 陽向は腕を組んで、上を見上げた。俺は月影の夢絶なのにどうして一人で行ったんだ? 泪に何かあったら、どうするんだよ。


「俺もそこに連れてってくれ」


 陽向が言った。


「それは駄目です」


「何でだよ?」


「バル艦長の命令です。待機命令が出ているので、ここから動くことはできません」


 オキーフがそう言うと、陽向はそれ以上何も言わなかった。陽向は艦長の命令がどういうものかを分かっていたからだ。


「どうか、部屋で待機していて下さい」


 と、オキーフに言われた陽向は自分の部屋に戻った。しかし、部屋でじっとしていられない陽向は、すぐ部屋を出た。


 泪は、なんでまた単独行動したんだ。俺がまた泪の気持ちに気づいてやれなかったのか。赤い瞳って聞いてから、なんとなしに落ち着きかがなかったし……。お互いあの赤い瞳に思っていることはある。けど、今回こうやってまたとない機会を得たんだ。無理して一人で行くことないのに……。まだ俺は泪に夢絶として信頼されていないのか……。

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