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 月影は、烏丸神社へ帰る車中一言も陽向と話さなかった。陽向がずっと水純から聞いた夢解釈の話を一方的に話していた。


 結局、単純思考の陽向は誰の理論でも感化されやすいのだ。目新しいものなんかは特に。ある意味、素直なのかもしれないけど。


 そもそも夢絶は、一人で対象の夢の中に入ることは出来ないから、陽向は私に取り入っているだけ。おそらく陽向は夢の中に入れる夢見なら誰でもいい。そう。私じゃなくてもいい。


 でも、どうして夢絶をしているのか? ふん、記憶がないから聞いたところでわからない。


 あぁ、そうか。自分を助けて欲しいがために私の呪いを解いてくれるんだっけな。


 呪い――。


 夢喰師か。昔から周囲ではそんな言われ方をされていたのか。


 草訳水純。陽向の前で私のことを喋ってしまった。狂気の世を作ってしまった私が今やっているのは、彼女が言うようにただの罪滅ぼしよ。生まれた時から夢を喰う呪われた身体で、自分で蒔いた種を拾う呪われた私の人生を知ってしまった陽向。


 これで私との居心地の悪さに離れて行くのか。


 彼女が話していた内容に私の知らないこともあった。


 悪夢を喰うことで、その悪夢を利用することが出来る。父はそんなこと一言も言っていなかった。それは私が気づかなかっただけかもしれない。とは言っても、私には悪夢を利用するなんてこと出来る訳ない。


 喰って、呪いの作用に耐えることが精一杯なのに。それをどうやって扱えと言うのだろうか。特段、必要なことではない。


 そう。慌てて何かを始めたって、簡単に出来るわけじゃない。どんなこともいずれゆっくり始めたらいいんだ。


 月影は烏丸神社に着いても、誰とも話すことはなかった。むしろ、周りの声は聞こえていなかった。ずっと、自分と会話をしていた。


 月影は、眠りに落ちるまでずっとそんなことを考えていた。

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