7

その夜、陽向と月影はまた畑岡氏の家を訪ねた。月影は、畑岡氏が不在であればなと思って呼び鈴を鳴らした。


 しばらくしてから、玄関の扉が開いた。案の定、畑岡氏が出て来た。少なからず娘の一大事であると思っているのだろうか。それともたまたま家にいただけのことなのだろうか。


「もう来ないでくれ。君たちに用はない。優秀な夢見を雇ったから。帰ってくれ」


 畑岡氏は、門越しにきっぱり言って来た。


 そうきたか……。


「優秀な夢見だって? そりゃ、誰なんだ」


 陽向が門を乗り越える勢いで問う。


「君らと出来が違う、胡散臭さのない夢見だ」


「俺らの仕事を見ないで、そういうこと言わないでほしいな」


 確かに陽向の言う通りだが、畑岡氏が正規に雇って来たってことは、それなりの実力があって商売をしている人に違いない。月影はちょっと悔しさを覚えた。


「もういい、陽向」


 月影が止めた。


「泪。引き下がるのかよ」


「えぇ」


 月影は畑岡氏に一礼して路肩に止めてある車に向かった。陽向も仕方なくその場を離れた。


 運転席にドスンと座り、その勢いでドアを強く閉めた陽向。車が大きく揺れた。


「なんで引き下がるんだよ、泪」


 さらにハンドルを叩く。


「誰が対象から手を引くって言った? 裏口から入る。他の誰だか知らない夢見に仕事をとられて、簡単に引き下がる私だと思わないで」


 意外だ。すっかり諦めるのかと思っていたけど、かなりの負けず嫌いだ。あれほど夢見から遠ざかっていたのに、今はやる気満々だな。ほとんどそういう感情は表に出さないが、他の夢見がどんなやつなのか知りたくて興奮しているんだな、と陽向は思った。


「で、どうするんだ?」


「烏丸神社方面に向かって」


 一度、神社に帰るのか。方面ってことは、違う場所をまた指定してくれるのだろう。


「あいよ」


 陽向は、車を発進させた。

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