第1話 #6「俺にも春が来た!」
HRが終わり、授業も校内の施設を回ったり学年集会とかだったり初日はかなり楽なスケジュールだ。とりあえず今は教室で待機中なので少し眠ろうかなと思い寝る体制に入ろうとした時だった。俺の机の上に丸められた紙クズが落ちていた。
誰だよ、こんな事した奴と思いながら周りを確認する。たぶん、俺のリアクションを気にしてる奴がいるはずだ。不審な動きをしてる奴がいたら問い詰めてやる!
周りを見渡すと斜め後ろの席にいた彼女とまた目があってしまった。なんでだろう。何回か目があっているせいかドキドキする。まさか、彼女が?
それを察したのか彼女は小さくうなずいた。どうやら本当に彼女の仕業の様だ。
因みに彼女の名前はHRで分かった。名前は夏目 有紗(なつめ ありさ)。中学まではアメリカに住んでいたらしい。要は帰国子女なのである。それ以外のことは一切不明。だが、そのミステリアスなところがまたイイ! とどこかの男子が言っていた。かなり男子にはうけがいいようだ。
そんな彼女から紙クズを押しつけられた俺は、ひょっとしたら何か書かれているんだと思い、中身を確認してみる。やっぱり何か書いてある。
『昼休み 校舎裏に来て』
そう書かれていた。
「こ、こ、こ、こ、こ…」
もうそれ以上の言葉がでてこなかった。彼女のほうにまた目を向けるがまたも彼女は目を逸らしていた。なんだか手も震えてきたし顔も熱くなってきた。おかしいなぁ、風邪でもひいたかなぁ。
というかこ、これってまさか、まさか!!
---それから上の空のまま時が流れ午前の授業も終わりを迎えた。終業のチャイムが鳴り、他の生徒達は購買に向かったり、友達同士で机をくっつけて弁当を広げ始めたりしている中、俺はガチガチになりながら周りを見渡し斜め後ろの彼女の席に目を移す。もう彼女の姿は何処にもなかった。もう校舎裏に向かっているだろうか?
俺もゆっくりと席を立ち教室から出る。教室から出ると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「和彦ー!」
声の持ち主はやっぱり丸岡の声である。因みに丸岡とは別のクラスになっている。
「メシ行こうぜー」
と誘いに来てくれた様だ。だが、俺には大事な用があるんでな。悪いな、丸岡よ。
「悪いな! ちょいと野暮用があってね。また今度な!!」
「??」
ちょっとドヤ顔をかましながら丸岡の誘いを断りそそくさとその場を立ち去る。丸岡はポカンとした顔をしていたが。本当にすまないと思ってるよ。でもこれから俺は本当の春を向かいに行かなくちゃいけないんでな!
俺は遊園地に行く子供の様に心を弾ませながら校舎裏へと向かっていった。
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