シイ 水深3㎝

 ガラス玉は海に落ちた。


 波が立てた白い泡が一瞬球体を呑みこみ、すぐに離す。その先はひどく青い色の海で、入ったかと思えば水底に触れることもかなわず、水晶に引っかかって止まる。案外に近い空がゆらゆらと上から光を落とした。


 急に波が引くように流れができると、人魚がガラス玉に口づけた。いや、その唇はわずかにガラス玉には届かない。泡だけが流れに乗って人魚へと流れて行く。



 ラムネの海はもうすぐ干上がる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る