10.『君の名は*』(2)聖地巡礼考察
👉ポイント
・『君の名は』では映画をきっかけに集客しているのに対し、『君の名は。』では映画の舞台となったことそれ自体が呼び水になっている
・場所がどこでもよいという性質はビジネスとして活用しやすく、地域のプロモーションなら批判もされにくい
表?:両映画の舞台探訪先の例
【『君の名は』の舞台探訪先の例】
尖閣湾(新潟県)・水郷潮来(茨城県)・雲仙地獄(長崎県)・摩周温泉(北海道)・阿蘇(熊本県)・数寄屋橋(東京都)
※地域を代表する観光地
【『君の名は。』の舞台探訪先の例】
飛騨古川駅(岐阜県)・飛騨市図書館(岐阜県)・松原湖(長野県)・須賀神社(東京都)・新宿御苑(東京都)・前田南駅(秋田県)
※地元住民のための施設を含む
前回に引き続き、『君の名は』と『君の名は。』の比較です。
『君の名は』では主人公二人がすれ違いを繰り返す中で、舞台が日本国内のあちこちを転々とします。協賛には各地の自治体や交通関連の企業が名を連ねており、地域の観光振興に一役買いました。経済成長で国内旅行が拡大する中で、多くの観光客が撮影地を訪れたのです。
表に示しますように、対象地は名所や景勝地が主体でした。この観光は作品の舞台であるが
翻って『君の名は。』では「聖地巡礼」が話題になりました。この用語自体は古くから使われておりましたが、2016年のユーキャン新語・流行語大賞トップテンにも選出されていますように、『君の名は。』によって普段アニメに関心がない層にまで広がったと言えましょう。
三葉の住む糸守町のモデルの一つとなった岐阜県飛騨市の飛騨市観光協会のホームページでは、聖地巡礼のコースが紹介されています。
http://web.archive.org/web/20160925171505/http://www.hida-kankou.jp/model/1000000603/
コースの中で合わせて訪問することが推奨されているように、飛騨市には作品とは無関係に魅力的な観光名所が多くありますが、聖地になっているのはそういう場所ではありません。これはまさに観光は作品の舞台であるが
この点に関しては、本来的な意味での聖地に非常によく対応しています。例えば、サンティアゴ・デ・コンポステーラはカトリック三大聖地の一つに数えられ、多くの巡礼者を集めていますが、奇跡的に発見された聖ヤコブの墓がなければ、人口10万人にも満たない田舎町にすぎません。
どこでもよいというのはweb小説にとって光明です。「1.未開拓の領域はどこだ?」では金にならないと書きましたが、地域のプロモーションという観点からお金を引っ張ってくることができるかもしれません。この点も本来の聖地と同様で、サンティアゴ・デ・コンポステーラも、キリスト教徒によるイベリア半島再征服運動の強力なプロモーションとして創造され、今日に至るまでその威力を発揮しています(※)。
もちろんステルスマーケティングは嫌われますので、細心の注意を払う必要があります。『サザエさん』は最近、日産の露骨な宣伝をやって顰蹙を買いました。いっそ副題にネーミングライツを導入していた『秘密結社鷹の爪』の激情版シリーズのように、堂々とやってしまうといいかもしれませんが、聖地巡礼はややハードルが低いように思われます。『サザエさん』のオープニングもあからさまな宣伝ですが、批判的な意見は聞きません。
※大事なことなので繰り返しておきますと、この文章はフィクションです。
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