2017年5月27日 12:54
11.『君の名は*』(3)コンテンツの寿命への応援コメント
「青空文庫」が有名ですよね。同じように、古い楽曲の発信をしているサイトも、映像の発信をしているサイトもあります。上から数えた「人気」の作品で語っていては見えてこない部分があり、よく聞く、コンテンツの寿命が短いと言われる対象は中核のモノではないでしょうか。皆に知られたものはさらに長命に、さらに売れるようになり、そこに届かなかったものの寿命はますます短く、ますます売れなくなっている、という風に聞いていたのですが。ごく一部のものだけが売れる、一極集中が起きている、という事と理解しています。映画のシステムですと、売れた映画はロングラン上映でいつまでも上映されますが、不人気なら質に関係なく打ち切り状態で切られ、その分を人気作上映に回すというもので、完全に一極集中です。1~8あるスクリーンの6つが同じ映画という事も昨今は珍しくもありませんし。さらにライバルとして、「過去の名作」までが簡単に掘り起こされて参戦してくる環境になったという事で、そこはご指摘の通りだと思います。新旧取り混ぜてとにかく溢れかえっている状況で、人々はより「量より質」の価値観に偏重し始めているのではないか、という気がします。より、ごく一部の名作だけに一極集中で人が集まり、本当に代表的な作品しか読まない「各分野で広く浅くタイプ」が多くなり、「そのジャンルだけだが造詣は深い」といういわゆるオタクが減っているか、広く浅くのタイプがさらにますます広く浅くを極めているか、と考えています。オタク型の人間は、他方面がどうとかは無視出来る方が多いですが、オタクでない普通のタイプは、言葉は悪いですが八方美人というか、全方位で情報収集しようという感じに見受けますので、それが関係するのかな、と私的には思っています。長々と感想、失礼しました。いつも楽しみに読ませてもらってます。(^^)
作者からの返信
まめ太さんコメントありがとうございます!ご指摘、なるほどという感じがします。確かに、トップの売上はますます大きくなり、一方で出版点数も増えて底辺が広がる中で、その間にある中ヒットから小ヒットくらいの作品(これが「中核」ということかと理解しました)が割を食っていますね。映画年間観客動員の1割が『君の名は。』というのは恐ろしいです。この辺は最初の方に書いた、中間層の没落と関係しているのかもしれません。ただ、そのうえで思うのは量の問題と寿命の問題は分けて考える必要があるということです。雑な議論ですが、音楽で言えば、武道館ライブを行うアーティストは増えていると聞きます。武道館を埋めるくらいのファンのいるアーティストは増えているわけです。もちろん背景にCDで稼ぐビジネスモデルからライブで稼ぐビジネスモデルへの転換が起きているわけで、ライブ観客自体のパイが増えているから起こる現象ではあります。しかし、これまた雑な議論ですが、CDよりもライブの方がビジネスの時間的なスパンとしては長いのではないかと思います。わざわざ予定を空けて、入場料と交通費を払ってライブに行くわけですから、ライブに来るのはそれなりに長期間熱心に応援しているファンなのではないかと思います。これに対し、例えば1990年代のビーイングやエイベックスのミリオンヒットを連発していたアーティストは、早々と消えてしまった印象を受けます。10年代ギリギリ武道館アーティストが音楽から得ている収入は、90年代ミリオンアーティストのそれより恐らく少ないかと思いますが、とりあえず活動期間で言えば、ギリギリ武道館アーティストの方が長いんじゃないでしょうか。もちろん武道館、ミリオンはトップですが、その下の「中核」層でも似たような状況ではないでしょうか。もう一つ、トップという概念が変わっているというのもあるでしょう。カクヨムから書籍化された作品は多いですが、必ずしも大ヒットとはなっていないと聞きます。しかし、仮に書店からは消えてしまっても、カクヨムの累計ランキングには残り続けます。世間全体から見れば僅かでしょうが、新たに作品を知る人は出現し続けます。同じように、エブリスタにはエブリスタの、ハーメルンにはハーメルンのトップがあるはずで、世間全体から見れば一年で消える中核レベルでも、何年というレベルで生き続けるのではないでしょうか。とは言え、反論できるのはここまでです。映画に関しては観客数が横ばいなのにスクリーンは増加していてハードルが下がっていると思っていましたが、仰る通り、系列が関係なくなって集中して他の上映期間が短くなるという方が強そうです。書籍も、単行本がメインに、みたいな話はマンガを除けば最近の変化とはいいがたいですよね。ので、やっぱり寿命は短くなっているのかもしれません。価値観の変化は全く考えてなかったです。今日の更新分でも書きますが、「質」って言うのもなかなか厄介な概念ですよね。『君の名は。』はそりゃ高品質な映画でしょうが、「2016年で最も質の高い映画は何か」と問われれば、みんなもっと色々な答えをするかと思います。だったら一極集中しないんじゃないかという気もしますし。みんなライトになってしまうという考えは新鮮でした。容易にいろんなコンテンツにアクセスできるというのは、深く極める人を増やすと認識していましたが、言われてみれば広く浅くも同時に容易になりますね。オタク的に振舞うって言うのは何だかんだ時間と金がかかりますから、(極論すれば『源氏物語』みたいに)社会上層部の限られた楽しみに回帰してしまうのかもしれません(イヤな想像ですが)。投げっぱなしですみませんが、こんなところで。そう言っていただけると励みになります。こうやってコメントで議論するのも楽しいです。ありがとうございました。
11.『君の名は*』(3)コンテンツの寿命への応援コメント
「青空文庫」が有名ですよね。同じように、古い楽曲の発信をしているサイトも、映像の発信をしているサイトもあります。
上から数えた「人気」の作品で語っていては見えてこない部分があり、よく聞く、コンテンツの寿命が短いと言われる対象は中核のモノではないでしょうか。
皆に知られたものはさらに長命に、さらに売れるようになり、そこに届かなかったものの寿命はますます短く、ますます売れなくなっている、という風に聞いていたのですが。ごく一部のものだけが売れる、一極集中が起きている、という事と理解しています。
映画のシステムですと、売れた映画はロングラン上映でいつまでも上映されますが、不人気なら質に関係なく打ち切り状態で切られ、その分を人気作上映に回すというもので、完全に一極集中です。1~8あるスクリーンの6つが同じ映画という事も昨今は珍しくもありませんし。
さらにライバルとして、「過去の名作」までが簡単に掘り起こされて参戦してくる環境になったという事で、そこはご指摘の通りだと思います。
新旧取り混ぜてとにかく溢れかえっている状況で、人々はより「量より質」の価値観に偏重し始めているのではないか、という気がします。
より、ごく一部の名作だけに一極集中で人が集まり、本当に代表的な作品しか読まない「各分野で広く浅くタイプ」が多くなり、「そのジャンルだけだが造詣は深い」といういわゆるオタクが減っているか、広く浅くのタイプがさらにますます広く浅くを極めているか、と考えています。
オタク型の人間は、他方面がどうとかは無視出来る方が多いですが、オタクでない普通のタイプは、言葉は悪いですが八方美人というか、全方位で情報収集しようという感じに見受けますので、それが関係するのかな、と私的には思っています。
長々と感想、失礼しました。
いつも楽しみに読ませてもらってます。(^^)
作者からの返信
まめ太さん
コメントありがとうございます!
ご指摘、なるほどという感じがします。確かに、トップの売上はますます大きくなり、一方で出版点数も増えて底辺が広がる中で、その間にある中ヒットから小ヒットくらいの作品(これが「中核」ということかと理解しました)が割を食っていますね。映画年間観客動員の1割が『君の名は。』というのは恐ろしいです。この辺は最初の方に書いた、中間層の没落と関係しているのかもしれません。
ただ、そのうえで思うのは量の問題と寿命の問題は分けて考える必要があるということです。
雑な議論ですが、音楽で言えば、武道館ライブを行うアーティストは増えていると聞きます。武道館を埋めるくらいのファンのいるアーティストは増えているわけです。もちろん背景にCDで稼ぐビジネスモデルからライブで稼ぐビジネスモデルへの転換が起きているわけで、ライブ観客自体のパイが増えているから起こる現象ではあります。
しかし、これまた雑な議論ですが、CDよりもライブの方がビジネスの時間的なスパンとしては長いのではないかと思います。わざわざ予定を空けて、入場料と交通費を払ってライブに行くわけですから、ライブに来るのはそれなりに長期間熱心に応援しているファンなのではないかと思います。これに対し、例えば1990年代のビーイングやエイベックスのミリオンヒットを連発していたアーティストは、早々と消えてしまった印象を受けます。
10年代ギリギリ武道館アーティストが音楽から得ている収入は、90年代ミリオンアーティストのそれより恐らく少ないかと思いますが、とりあえず活動期間で言えば、ギリギリ武道館アーティストの方が長いんじゃないでしょうか。もちろん武道館、ミリオンはトップですが、その下の「中核」層でも似たような状況ではないでしょうか。
もう一つ、トップという概念が変わっているというのもあるでしょう。カクヨムから書籍化された作品は多いですが、必ずしも大ヒットとはなっていないと聞きます。しかし、仮に書店からは消えてしまっても、カクヨムの累計ランキングには残り続けます。世間全体から見れば僅かでしょうが、新たに作品を知る人は出現し続けます。同じように、エブリスタにはエブリスタの、ハーメルンにはハーメルンのトップがあるはずで、世間全体から見れば一年で消える中核レベルでも、何年というレベルで生き続けるのではないでしょうか。
とは言え、反論できるのはここまでです。映画に関しては観客数が横ばいなのにスクリーンは増加していてハードルが下がっていると思っていましたが、仰る通り、系列が関係なくなって集中して他の上映期間が短くなるという方が強そうです。書籍も、単行本がメインに、みたいな話はマンガを除けば最近の変化とはいいがたいですよね。ので、やっぱり寿命は短くなっているのかもしれません。
価値観の変化は全く考えてなかったです。今日の更新分でも書きますが、「質」って言うのもなかなか厄介な概念ですよね。『君の名は。』はそりゃ高品質な映画でしょうが、「2016年で最も質の高い映画は何か」と問われれば、みんなもっと色々な答えをするかと思います。だったら一極集中しないんじゃないかという気もしますし。
みんなライトになってしまうという考えは新鮮でした。容易にいろんなコンテンツにアクセスできるというのは、深く極める人を増やすと認識していましたが、言われてみれば広く浅くも同時に容易になりますね。オタク的に振舞うって言うのは何だかんだ時間と金がかかりますから、(極論すれば『源氏物語』みたいに)社会上層部の限られた楽しみに回帰してしまうのかもしれません(イヤな想像ですが)。
投げっぱなしですみませんが、こんなところで。
そう言っていただけると励みになります。こうやってコメントで議論するのも楽しいです。ありがとうございました。