踊る軍神
美作為朝
宗教的原理主義派が支配するアフリカの小さな街での第一フェーズ
また、一人兵隊が倒れた。
路地からで開けた、噴水の広場、兵士たちは"屠殺広場"と呼んででいたが、そこまで、到達すると必ず、どこからか、狙撃され、兵士は倒された。防弾ベストの内側は汗でべちょべちょだった。
小隊長のフェルマー中尉が叫んだ。
「だれか、発砲光を見たものはいるか、もしくは筒状のものを」
返事は、無言、イコール誰も見ていない。
「中尉、衛生兵を、ルネは生きてますぜ」ベルヌーイ一等兵がフェルマー中尉のはるか後方の安全な位置から叫んだ。
「メディッーク」フェルマー中尉は叫んだ。
衛生兵は、比較的責任感の高い兵が多い。第二匍匐姿勢で、路地の先頭にいるフェルマー中尉の位置まで、治療キットを肩にかけ、ライフルも持たずにやってきた。
ホワイトヘッド衛生兵は、緊張した面持ちでフェルマー中尉を背中から見つめた。
「やれそうか?」
ホワイトヘッド衛生兵は、無言で頷いただけだ。
噴水の広場では撃たれた、ポイント・マンのルネ・オイラー伍長が苦悶の表情のままどうにか片足で蹴って、仰向けの姿勢のまま路地のほうに戻ろうとしていたが、例え、撃たれる前でもそんなことは無理だっただろう。
スタイルズ衛生兵は、防弾ベストとメットを直し、一番低い匍匐姿勢で路地から出て、広場に入っていった。
フェルマー中尉の脇に居た、ガロア軍曹が言った。
「今度こそ、発射光の確認を」
「第一分隊は、右側を、第二分隊は、左側をチェックしろ」
もう小隊には二個も分隊はいなかった。小隊が分隊に取って代わっていた。
過激派が使用する、PNライフルの甲高い発射音が広場だけでなく、小隊全員がいる路地すべてに響いた。
「プラグマティズムの野郎、武器を持っていない衛生兵を撃ちやがった」
ガロア軍曹が吐き捨てるように言った。
「それより、発射光を確認したか!」とフェルマー中尉。
またもや、返事はない。
そのとき、どこからかポーンと乾いた、筒状のものの蓋を開けるような音がした。
兵士は、周囲で音でもなんでも変化あると咄嗟に伏せたり、遮蔽物に身を寄せたり、身構える訓練がなされている。
擲弾筒から、擲弾が発射された。
「テイク・カヴァー!」フェルマー中尉は叫んだ。
戦争映画より一段、迫力のない、破裂音がして、ルネ・オイラー伍長とホワイトヘッド衛生兵の倒れているあたりで何か爆発した。
二人のどちらのかわからぬ、手足と体の一部が、ちぎれとんだ。
「カンツ!」フェルマー中尉の脇に居た、ガロア軍曹が吐き捨てた。
「中尉、APCか戦車の要請を」
「許されていないし、派遣されてもいない」
「このままじゃ、ここから一歩も進めないし、釘づけですよ」
今度は、フェルマー中尉が黙り込む番だった。
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