32話 完全な存在

 落ちた本を拾い上げ、彼女はため息をついた。

「思っていたより、展開が早かったね」

 と、書架の上に座った僕が言うと、彼女はこちらを見やってから、悩ましげにその顔を伏せて、

「ええ……」

 と小さく返す。彼女はそのまま、倒された書架の周りで散らばった本を拾う作業に戻った。かの猟犬が荒らしていった通路を元に戻すのは、今となっては彼女の仕事だった。けれど彼女は、浮かない顔だ。ねじ曲がった書架が折り重なった数多の本のそのまた上に覆いかぶさるようにして倒れているのを見、これを自分で直せるだろうか……と眉根を寄せて。

「もう少し引き伸ばせるかと思っていたんだけど」

 裁判所の猟犬と言うからには優秀だ、と僕が呑気に喋っている下で、彼女は猟犬に足蹴にされた本の土埃を払い、凹んだその表紙を慈しむように撫でた。

 そうだ。実際のところ、僕らが思っているよりもずっと早く事は起こった。猟犬は早くも一定の真実にたどり着き、眼光鋭く真の敵を追い、決定的な一手を打とうとしている。そう。あの裁判所の猟犬は、ひとつの真実にたどり着いた。けれど、彼女はひとつ勘違いをしている。ページが改竄されたのは確かに事実だが、その改竄を施した人物、それは、狂犬じみた娼館の彼などではなく、今ここにいる僕らなのだ。これを読んでいるあなたも知っての通り、彼はこの森の真理にそこまで深く踏み込んでいないし、ここの本の記述を書き換えるだけの力もない。猟犬の怒りの矛先が向くべきは、本来僕らだ。もっと正確に言えば、目の前で本を拾うことに努めている少女、彼女こそが標的となるべきだろう。

「私たち、間違ったこと、してませんよね」

 本を拾い続けながらそう問いかける彼女に、僕は偉大なる救世主たる、筈の、目の前の人物があんまりにも頼りなくって不安になる。僕らの反対や心配を押し切り、情報を切り貼りすることを断行したときの、あの使命感に満ちた顔つきや声音ってのは、一体どこにいってしまったんだろう。僕は口の端を噛んでいるのをやめて

「一番矛盾が出にくい方法だった」

 と、彼女に返事をしてやる。

「その点については、僕が大いに保証するところだ」

 僕は慎重にそう言葉を選んで、腕を組み、星空を見上げる。

「そう、そうですよね」

 彼女の不安げな声を聞き流しながら、僕は顎に手を当てた。そう、実際のところ、これが一番矛盾のない方法だった。鍵を持っている彼を黒衣の猟犬から逃がすために、僕らができたこと。それは、猟犬の注意を別のところに向けさせる事だった。彼のことを本の森に招いた彼女は、筆記係の彼に頼んで、彼がここに迷い込んできたことについて、一切の記述をしないようにした。彼が何度も青緑色のドアからここに入り込んできたあの筋書きについて、彼の本には何も書かれておらず、ここへの来訪にかかる前後の流れについても大きな矛盾を生まない程度に濁して書いた。少し前まではその小細工で猟犬の目を免れていた。けれど、あの猟犬はとうとう失くした鍵を探し始め、彼の背後に一歩一歩確かに近づいている。

「あなた、言っていましたよね」

 と、彼女の声がするから僕は下に目を向けた。

「『彼女』と渡り合えるのは、『彼』くらいだと……」

 彼女の声はやっぱり不安げに小さく震える。彼女の言っている「彼女」と「彼」というのは、かの猟犬と、その猟犬の襲撃を受けたあの透明な華屋の用心棒のことだ。

「確かにそう言ったね」

 と僕が返すと、彼女ははにかんで僕の目を見た。

 そうだ、このままでは、猟犬の牙が我らが主人公の喉笛にかかるのも時間の問題だ、と思った僕たちは、彼に向くはずの目を無理に別の人物に向けさせた。あるべき場所にあったページを切り離し、一人称を書き換え、前後に支障をきたさないよう、最小の手数でもって改竄した。

「そうだよ……猟犬の彼女とまともに戦い、凌駕できる華屋のひとでなしは彼くらいだ。他のひとでなしたちも、一対一でなければあるいは……。けれど、保証はできない。といったところだと思う」

 以前と寸分違わぬ僕の説明に、彼女は露骨に安心した顔をした。ああ、そうやってなんでも顔に出るところが憎めないんだよなあ、彼女。それで、話を戻すけど、僕らの主人公を守るために、猟犬を迎え撃てるほどの力量があり、なおかつページの差し替え程度で矛盾なくストーリーが続くような、置き換え可能の人物、それが透明な彼だった。だから、僕らは彼を人身御供にした。もっとも、僕らの目論見通り彼はあの猟犬を追い返したわけだから、犠牲にはならなかったんだけど。

「君がさっきから言っていることは、僕から見ても全部正解さ」

 僕はそうして彼女を肯定してやる。それから一拍置いて、

「でも」

 という僕の声に、彼女は不安げな目を上げた。

「君はなぜそこまで、彼に肩入れする?」

 彼女はまともに僕の顔を見て、戸惑った顔で小さく口を開く。

「それは」

 言葉を続けようとして、けれど彼女自身の中に言葉はなかった。なぜ自分が彼に味方をするのか、彼女自身よくわかっていないのだ。僕はそのきょとんとして無邪気にも思える彼女の態度に、幾分苛立っている自分を見つけてしまった。ああ、良くないな、これは。

「君は彼のことばかりよく見ているね。彼に関する記憶ばかり遡って読む」

 苛立った僕の声音がきりきりと彼女を刺すようになった。けれど、彼女は、僕らは、今のまま、とぼけたままではいられない。

「隠したってしょうがないんだ。そもそも、別に後ろめたいことでもないんだし」

 彼女はそこで、意外そうな顔をこちらに向ける。

「君が彼に味方をしてあげたいって思うのは、論理的な理由があることじゃない」

 そうだろ? と付け足し、僕は書架の上であぐらをかいた。彼女は手に持った本のことを忘れてしまったみたいにして呆然とそこに立っている。

「ただ、純粋に『味方してあげたいから』味方をしている」

 彼女の喉が小さく息を吸うのが聞こえる。

「何も持たない彼に、親近感を抱いているから。弱く無力な者に、哀れな弱者に、力を与えてやりたいからだ。そうだよね」

 彼女は戸惑うままに小さく口を開け、何も言えないでこちらを見ている。ああ、そういう顔をされると、僕の決心が揺らぐからやめてほしいんだけど。もう! 僕っていっつもこういう役目を割り振られるなあ。そうして思わずため息をつくと、彼女はまだどうしたらいいのかわからないって顔だ。僕は凍りついた空気が鬱陶しくなって、道化師みたいな手つきの右手を振って、


「いいんだ。君の基準で判断すれば」

 とおどけた声を出す。

「でも、これだけは言っておくけれど」

 という僕の尖った追撃の声に、緩みかけていた彼女の心がまたぴんと張り詰めた。

「一度介入したのなら、最後まで彼のことを導くんだ」

 まっすぐに彼女のことを指した僕の指の先を、彼女自身が見つめている。それは、銃口を突きつけられた反逆者の面持ちに似て。

「彼が結末を迎えるまで」

 彼女の揺れていた心が、僕の指の照準の先で痛みに捉えられる。

「運命の女神として、君は、最後までその役割を果たせ」

 女神は、穏やかな微笑みをたたえるべきその口を、決意に満ちて引き結んだ。


***


 明日から、どんな顔してカフェに行けばいいのかな。私はそればっかり考えながら帰ってきて、アパルトマンの戸口をくぐって中庭に入った。乾いた落ち葉がつま先にひっかかって、からり、と転がる。「また明日」って茜は言ってた。それって、明日も働きに来ていいってことだ。茜は私に「失望して」て、でも私のことを雇い続けるってこと。それってつまり……どういうことなんだろう。私はそこまで考えて、ちょっと泣きそうになった。どうしよう。どうやったらいいんだろう。この際、別のところで働いたほうがいいのかな。私はそうして、ごめんなさい、やめますって茜の顔を見て言う自分のことを思い浮かべた。たとえば、椿に頼めば、なにかお仕事を紹介してくれるのかもしれない。私、あのひと、きっと顔が広いんだろうし。でもあの人がやってるのって大体は大人のお店よね。カフェで働くって決める前、茜に連れられてキャバレーをちょっと覗いたことがあるけど、あの時は気後れしちゃったな。今だってそうだろう。私、あんなところで働けない。そうしたら、やっぱりカフェで働き続けるしかないんだ。でも、茜が謝まらせてくれもしないまま、明日もまたあそこに行くのなんて、やだなあ。私、自分のことを嫌いな人に向かってにこにこするの、駄目なんだ。たぶん出来ないよ。私は階段の下にしゃがみこんで、そのまま泣き出してしまおうかと思った。でも、冬の夜は寒いから。それに、階段を上っていった私の部屋では春待ちゃんが私のことを待っているから。

「よし!」

 と私は口に出して立ち上がり、涙がうるむ目を拭って、皺の寄った上着をきっと伸ばして、階段を上がり始める。お仕事、早く上がれちゃった! って、笑顔を作ることを心に決めて。

 人気のない階段をぐるぐる上っていって、私は部屋のドアに手をかけた。扉の下から細く明かりが覗いている。春待ちゃん、今何してるかな。この間買ってあげた本を読んでいるのかも。

「ただいま」

 という私の声が、開いた扉の向こうに吸い込まれて、ベッドサイドランプの光がぱっと目に入る。天井の明かりも点いている。ストーブががたがたと音を立てている。ベッドの上の布団がめくれて、枕元には子供向けの冒険小説が開いたまま。そして、ベッドの奥にある出窓のカーテンが、揺れたまま。

「春ちゃん……?」

 私が踏み込んだ部屋の中からは、誰の声もしなかった。ハイヒールの音が石畳の床にこつんと鳴って、私は玄関のドアを後ろ手で閉めて、ドアの音が部屋の中に少し反響するのに驚きながら奥のキッチンを覗く。小さなダイニングテーブルには、二つの椅子が向き合っている。首を回す。ベッドの傍のクローゼットは開いたままで、しんと黙っている。眉根をひそめる私の頭の後ろに、カーテンがぶわりと翻る音がした。くるりとそちらを向く。聞こえた通りに、カーテンが風に揺れている。風に揺れているのは、窓が、開いているからだ。

 気づいた途端に私はぞっとして、走って靴のままベッドに上がり、開け放たれたままの出窓から身を乗り出して、

「春ちゃん!」

 と叫んだ。窓の下のレンガ屋根の赤色が、月の光の下にくすんで見える。私は吹きつける冬の風に胸の内まで凍ったような気がした。胸が騒ぐままにハイヒールを足からもぎ取って、部屋の中に放り投げ、慌てて屋根の上に降りて春待ちゃんの姿を探す。

「は」

「わ、ごめんなさい!」

 と頭の後ろから声がしたから私は振り返った。目の入ったのは、まぶしいランタンの光だった。その光の向こうから、春待ちゃんがすまなそうな顔で私のことを覗いている。彼女は、出窓の上に被さった三角屋根に腰掛けていたみたいだった。私は彼女の顔を見つめて、しばらくぽかんとしていて、だから春待ちゃんが動かない私に戸惑って、きい、と音を立てながらランタンを下ろしたときも、私はまだ口を開けていた。彼女がおずおずと、

「あの」

 と声を出したとき、固まっていた身体がやっと動き出して、私は瓦屋根の傾きの上に力が抜けたように膝をついた。

「よか……なんでそんなところにいるのよ……」

 と、私の声が頼りなく震えると、春待ちゃんは泣きそうな顔でまた、ごめんなさいと言った。彼女の手からランタンを受け取って、今度は彼女の身体に手を伸ばす。春待ちゃんは屋根に手をかけながら後ろ向きになって上から降りてきて、私がそれを半ば受け止めるような形で支え、下ろしてあげた。

「あぶない、でしょ」

 と私の声がぎこちなく言うと、彼女は

「うん」

 と俯いてしまう。私は屋根に腰掛けて、隣へ座るよう彼女に言った。

「なんでこんなことしたの?」

 と、私は、いつか母さんに言われたような調子で問いかけてみる。春待ちゃんは、う、と声を詰まらせて黙りこもうとしたけれど、その口を小さく開いて、

「上の方が、よく見えるかな、と思って……」

 と言った。そのままもっと顔をうつむかせてしまうから、私はもっと彼女の顔を覗き込まなきゃいけない。

「そうなんだ。でも、そんなとこに登ったら、危ないよね」

 と私は返す。いつか「ここは掃き溜めの中でも高いところだから、景色がいいんだよ」と言って、出窓の下に一緒に座ったことがあった。まさに、今みたいな感じにだ。ふたりで星を眺めて、でも寒くって、だからふたりできゃあきゃあ言いながらすぐ部屋の中に戻って、ストーブの火を消して、ふたり同じベッドで眠る。私はそういうのが結構好きだった。春待ちゃんも同じだったと思う。私たちね、結構うまくやっていってるんだ。そうやって考えているうち、隣にいる春待ちゃんの肩が震えているのに気づいた。びっくりしてその肩に触れると、彼女は涙目の真っ赤な顔を上げた。

「ごめんなさい、危ないってわかってたのに」

 私が何もできないでいると、彼女は私の顔を見つめたまま、

「亜ちゃんがわたしのこと、守ってくれてるって、だから、この部屋の中にいなきゃいけないんだって」

 わかってるよ、と彼女が言うから、私は、はっとした。私はちゃんと気づいてなかった。一日中同じ部屋の中で、暇つぶしは小説くらいで、いつ敵に襲われるかもしれないと思いながらびくびくして、彼女はここにいるんだ。だって、この部屋に春待ちゃんを置いて行って鍵を閉めたら、部屋に入れるのは私だけだ。だから私は、この部屋に春待ちゃんを「閉じ込めて」安全なようにしてからバイトに行く。でも、閉じ込められている間の彼女のことを、私は考えていなかった。けど、私は、彼女の身になって考えなきゃいけなかったんだ。

「ごめんね」

 今度は私が謝る番だった。私はそのまま彼女を自分の方に引き寄せて抱きしめる。でも、謝る以上のことはできなかった。だって、彼女をここに置いていかないで、私はどうすればいいんだろう。バイト先に連れて行って、休憩室に置いてもらおうか。でも、そうしたら今度は休憩室に閉じ込めることになる。じゃあ、カフェのお手伝いでもしてもらう? でも、茜を怒らせたばかりだ……。それじゃ、やっぱり市井や吉見たちに頼もうか。でも、春待ちゃんは市井や吉見たちのことをなんだか怖がっているみたいで、前に預かってもらおうとしたときも上手くいかなかった。私は色々考え、悩みこんでしまう。そうすると春待ちゃんは私の腕の中から私を見上げ、

「もう、こんなことしない。しないから、許して」

 と言って、私の背中に手を回して抱きついた。小さな身体はぷるぷる震えて心もとなくて、私は、こんな小さな子にこんなことを言わせてしまったことに、罪悪感みたいなものまで感じていた。そうだ、この子には、私しかいないんだ。私はすぐに彼女を抱きしめ返して、喉の奥に溜まった唾を飲み込み、

「もっといい方法を、一緒に考えようか」

 と口に出す。すると、春待ちゃんは私の中で小さく頷いた。私の胸に顔を埋めた彼女は、抱きしめられたまま

「でも」

 と言うから、私は彼女から少し身体を離す。

「今日は早く帰ってきてくれて、嬉しかった」

 彼女がそう言って笑うのはやっぱり可愛くて、私もつられて微笑んでしまう。

「何かあったの?」

 と彼女が尋ねてくるので、私は

「実はね……」

 と喋ろうとして、でも、どこかから不意に聞こえた、ものの壊れる音に心臓が飛び上がり、私は夢中で春待ちゃんを庇うようにぎゅっと抱いた。

「なに……?」

 屋根の上に恐々と立ち上がって周りを見回した時、もう一度同じような音がして、私は遠くまで続く瓦屋根の連なりの上に投げかけていた視線をぱっと下ろしてしゃがみこみ、春待ちゃんをもう一度きつく抱きしめた。私の視界がぐっと下に下がる時に一瞬だけ見えたのは、屋根の上で向かい合う、二人の人間のシルエットだった。


***


 紅の目が視界の中央で揺れ、瓦屋根の上を後ずさるのをじいっと見据え、裁判所の猟犬はじりじりと相手との距離を詰めようとしていた。仮面のように凝固した顔を持つその男は、依然温度のない紅の目で猟犬のことを見つめ返している。しかし、裁判所の執行役である華が自分を訪ねて来たことについて、彼が全くそれを予期していなかったということを、華自身も見抜いていた。けれど、どこからどこまでが敵の欺きであるのか測りようもない。己を隠し逃げ去ることに長けた異能を持つ、吉野が相手であるからには、なおのこと。

「あなたたちがこの掃き溜めの中でどんな商売をしようが、私の知ったことではありませんが」

 己が手で作り上げた黒い屋根瓦の大輪の中央で、ぐらりとその上体を揺らした華は、その冷徹な声音でその先を続けた。

「私たちを欺くことだけは、許しません」

 挑みかかるような華の視線を、避けもせずに真っ直ぐ受け止めた吉野は、じりじりと後退を続けつつ、大腿に据え付けたナイフに手を伸ばす。


***


 また来てしまった。青緑の扉の前で乾いた空気を吸いながら、それと同時に自分のぼろぼろの身体が真冬の夜気に揺すられて、壊れそうに軋むのを覚えていた。丸一日は何も食べていないのか、俺。そう考えるとますます心細くなって、頭が重しになるままここに倒れちまおうかとまで考えた。今なら、硬い絨毯の上でもぐっすり寝られるだろう。あと、千年くらいは。そしたら、もう……。そんな風に考えて、でも俺は俺自身を奮い立たせるように、右手の中にずっと入ったままの鍵を握り直した。冷たいままの鍵の痛さが、手のひらから全身、頭からつま先まで沁みていって、俺のことを必死に目覚めさせようとしてるみたいだ。きっと、実際にそうなんだろう。

「死ぬなって言うんだろう」

 開いた指の隙間から、かすみの鍵はこちらを見つめ返している。そうだ、君だって、最初からいなかったことにされたくなんて、ないもんな。そんなの当たり前だ。だから。

「みつけに行こう」

 俺は扉を開け、ひねったドアノブを木枠の向こうへと押し込んだ。


 誰もいない書架の間を、延々と、けれど目的地がはっきりしたような確信めいた心で進みながら、俺の頭にはひとつの像がぼうっと浮かんでいた。「俺の」本。棚の目立たない位置に収まっていた、小さくて見すぼらしく哀れな風貌の、あの本。

「四百二十二」

 今も目の奥に蘇る、あの数字の列。真横に並べられた三つのアラビラ数字。

「四・二・二」

 やっとわかった。いや、本当はわかっていた。それを、ずっと前から知っていたんだ。俺は。

「四時、二十二分」

 途切れたように立ち止まったとき、俺の目の前には、その本があった。前と同じく、屈まなきゃ見えないような、目立たない場所に、息苦しそうに収まっている。俺の指がその背表紙に刻まれた「四・二・二」に触れる。

「あの夕霞」

 喉の奥からはらりと言葉が溢れて、膝は自然と折れ、俺はろくな中身のないその本の背表紙に額を合わせた。この本は、俺と同じ温度を持っている。当たり前だ。これは俺なんだから。吐いた息がその背表紙にぶつかり、俺の顔へと戻ってくる。そのとき、聞き覚えのある、あの「かさついた」音がして、俺はのろのろと振り返った。数歩先の床上、知らぬ間に革張りの本が開いていて、そこから飛び上がった蝶たちがひとひら、ふたひらと揺れ踊り目の前を羽ばたいて、俺の心が決まるのを待っているのだ。ランタンの光の色をその羽に透かしながら、くるり、ひらりと俺の顔に影を落としては、また光を投げかける、美しくておぞましい紙製の怪物たち。

「今日は優しいな」

 俺は背中を書架に預け、白く黄ばんだ蝶たちの演舞をぼうっと捉えた。

「いい、抗ったりしないから」

 俺のその言葉に、蝶たちはまるで戸惑ったようだった。黄ばんだ白いはためきが、びり、と一瞬空中で止まって見えた。けれど、まもなくその中の一頭が群れの中からふらりと飛び出したかと思うと、ゆるりゆるりと俺の顔の前へとやってきて、ふるり、と俺の鼻の上に留まった。蝶は俺の鼻の上で羽ばたきを繰り返し、俺の両目の上に影を落としては光を与え、また影を落とすのを繰り返した。文字の刻まれた羽の奥から透ける橙の光は、まるで木漏れ日のような温もりを持っているのだった。俺はなんだか泣きそうになって、その正体不明の心の震えに、そっと目を閉じた。



 石畳の上を走る、走る、走り続けて、ぐらりと倒れる。目の前に迫った地面に目を瞑り、それでも左手は握りしめたままだった。手の内側にあるこの「冷たさ」を、離してはならなかった。


「復讐をしたの」

 視界の中央にいる黒髪の少女は、こちらに不気味な、けれど蠱惑的な輝きを持った笑顔をこちらに向けている。

「間違っていたと思う?」

「間違っていたと言って欲しいんだね」

 「俺」がそう返すと、少女は露骨に俺のことを睨んだ。

「俺に叱られれば、君だって少しは報いを受けた気になるって」

「黙ってよ」

 苛立たしげに上がったその肩が、薄暗い部屋の中で鋭利な形をとった。

「悪い子だ。君は」

 彼女はこちらを見遣った。

「そういう、自分を貶めて罪悪の中に浸るっていう性質を持っているところがね」

 彼女は眉をきっとさせてこちらを睨んだ。

「まるでロマン主義小説の主人公だ」

「どういうこと」

 幸い彼女に教養はなかった。でも、どういうこと、と言いながら寝台の上にごろりと横になった彼女の顔の中に佇む朱色の目は、俺が今まで出会ってきた高慢ちきで気取り屋で高尚な世界の全てを根本からぶち壊せるほどの可能性を秘めていた。彼女という存在は、いつか完成の時を迎えるだろう。それも、遠くない未来において。

「でもね」

 と俺が言うと、彼女はその朱色の瞳の上に一度瞼を下ろし、もう一度こちらを見上げた。

「君の考えは間違っていなかった」

 その言葉に、見開かれた彼女の瞼の内側に、その朱色の真円の輪郭が露わになる。彼女は寝台の上に起き上がると、重たい睫毛の下から挑むような目つきで俺のことを見つめ始めた。

「計算は合っている」


 「僕」が近づいていっても彼女は顔を上げなかった。今もまだその死骸の横に跪いて、どういうつもりなのか、横たわった胸の上に涙を落とし続けている。僕は彼女のほんの至近に寄ってから、優しく声をかけてやった。

「満足したかい?」

 彼女は振り向いた。つり上がった朱色の目が僕のことを睨み、ぼたぼたと涙を落としている。彼女はまともに泣いていた。死骸の顔に目をやると、男の開いた右目は、死に絶えて空を睨んでいる。この男に、涙を流す価値などありはしない。けれど、この娘は泣いている。浅ましい愛情みたいなものが、こいつらの間にはあったのかもしれないな、と思い至って、僕は吐き気を催した。

「君はさあ」

 僕は、この娘の気質というものを徐々に理解し始めていた。目の前の他人を睨みつけ、隙あらば喉に食らいついて殺してやろうとする怒りの鋭さ。この娘はそれを胸の中に飼っている。一見澄ました顔の奥には、確かに研がれた加害性と反抗心があって、彼女の行動の指針を定めているのだ。ああ、なんて、なんて生きづらい人間なのだ、我が妹よ。僕は彼女のことを、哀れな獣だと思っていた。彼女の怒りの根源にあるものについて、僕はほとんど当たりをつけていた。それは紛れもなく、恐怖心だ。僕は既にわかっていた。この娘は、自分を守るのに必死なのだということを。

 僕は、口を開く。

「別に、泣く必要はないだろう」

 彼女は戸惑ったらしい。きょとんと開かれた目から、ぽろりと、不恰好な様子で涙が落ちていった。僕は腰を落とし、彼女と同じ目線になってやる。

「間違ってるんだよ、その涙は」

 僕の言葉を、彼女は理解していないようだった。だからもう少しわかりやすく言ってやることにした。

「お前は、自分のために泣いているんだ」

 その瞬間、娘の両目が、かっと怒りに燃え上がった。僕は娘の目を見たまま、馬鹿でもきちんとわかるように、優しくゆっくり話してやることにした。

「お前は胸のつかえを吐き出して、自分だけ楽になったんだね」

 彼女は涙の向こうから僕のことを睨んでいる。それは、なんとまあ痛ましく滑稽な姿に思えたことだろう。彼女のそのあり様に、嫌悪感と、胸の軋むような奇妙な愛着とを同時に覚え、僕の心は定めていた場所に収まっていった。可哀想なこの娘の牙を折って、早く楽にしてやらねば。

「そりゃあお前は、まるで罪を清算したみたいに気持ちがいいんだろう」

 一言一言がその生意気な顔つきをした娘の胸の内側に染み込んでその隅々まで侵されて抜けなくなるようにと、僕は愛憎を込めて話す。

「『私はあなたが思ってるような女じゃない』って、正直に懺悔すりゃあなんだって許されるとでも思っているんじゃないか? 違うかね?」

 僕が穏やかな口調を崩さないまま手を伸ばし、彼女の胸ぐらを掴んだとき、それを予期していなかったと見えて、娘は一瞬固まった。が、その一瞬後、僕の言葉がどれだけ意味を持ってこの娘の中に染み入ったのかがわかった。その唇はわなわなと震え、僕に反抗しようとしながらも、瞳は不安定に揺れていた。ああ、あと、もう少しだと、僕は思った。

「そんなのじゃお前の罪は贖えない。贖えるような罪じゃないんだ」

 僕の口にはほのかに笑みが浮かび、彼女の胸ぐらを掴む手には憎しみが篭った。僕は両手をじわりと手前に引き寄せて、彼女の身体は着た服に引きずられるようにして、重たく愚図愚図と僕の方へ近づいた。

「お前は、嘘を吐き通さなきゃならない。種明かしなんてして、興ざめさせてやるな。最後まで本当を知らなきゃ、あいつはもっと幸せに死ねたんだ」

 彼女の目は奇妙に澄み切って僕のことを見つめ、恐怖と怒りに強張っていたはずの身体は、ぐったりとして、半ば僕に寄りかかっているようになった。

「お前の罪は、最後までお前ひとりだけで背負うんだ。誰にも渡したりするんじゃない。こいつは、お前のために死んだんだから」

 僕がそう言いながら彼女を放してやり、死骸に目線をやると、彼女の顔もまたぎこちなくそちらを向いた。

「お前はお前のために人を殺して、それでいてお前自身の悲しい宿命のために泣くんだ。お前はね、お前自身のためにしか泣けないような、『そういう』人間なんだよ。それを、わかっておかなくちゃね。お前は自分の罪ある魂を、認めなくちゃならない。お前が、根から醜い人間であるってことをさ。つまりは、間違っても美しくはなれないってことを」

 彼女の横顔は、奇妙に落ち着いている。僕は声を続けた。

「これからもたくさん、たくさん、お前のために死ぬんだよ。お前は、殺すんだよ」

 死骸を振り返った彼女の耳の形が僕にはよく見えた。僕はその耳に自分の耳を合わせるようにして彼女を抱き寄せた。彼女は驚いたようだった。その凍りついた背中に手を回し、僕は彼女の身体に自分の胸板をおしつけた。骨ばったふたつの身体が、埋められない隙間を保ったまま痛みを伴って隣接している。僕は、異物としての自分を保ったまま、この救われない妹を抱きしめてやりたかった。

「お前が地獄に落ちても、僕が必ず、その後を追ってやる」

 僕がゆっくりとそう言葉を吐くと、彼女の胸がひくり、と息を吸うのがわかった。

「宿命のままに生きるんだ」

 彼女は僕を、僕の言葉を拒んだりしなかった。ただ、涙を流す人間の息遣いを僕の頭の後ろで鳴らしながら、じっと僕の言葉を聞いている。怪物が二匹、今ここで奇妙に「抱擁」の真似事をして、歪な影を路上に投げ出している。僕は目を閉じた。瞼の裏側には、尽きることのない暗闇が広がっている。

「行き着く先は皆同じ」


 目の前に倒れたままの男の手を持ち上げる。固まった死骸の手は指を開くのもままならない。けれど「私」はその指の一本をこじ開けて、その指の隙間に、冷たく平たいそれを押し込んで、もう一度その指を畳んだ。

 これは私の自分勝手なんだろうな。あのひとに言われたばかりの言葉が、現実味を持って頭の中で回っている。私はきっと、自分のためにしか泣けない。

 目の前の死骸になる前の男と交わした言葉や、いつかの夜に触れた体温、あちら側を向いていた男の髪の流れ、そういうのを全部、死骸の上に被せるように思い出して、考えた。ああ、そうか、私は、愛してはいなかったのかもしれないな。

 散々流したはずの涙が、ほんの一筋だけ追うように流れて、私はすぐにそれを拭った。これは偽善の涙なんだ。息を吸い、吐いて、けれど、私は私自身の言葉をどこかで肯定しきれない気がして、そうやってまだ自分が相手を「愛していたから泣いてる」なんて思い込んで、自分が醜いことを受け入れようとしていないこと、それ自体が嫌になった。だから、このことを考えるのはもうやめようと思った。

「私、ちゃんと地獄に落ちるね」

 呟いて、なんだか馬鹿っぽく開いた死骸の口が動きもしないのを確かめた。私、醜い女だけど、でも祈ってあげる。それが礼儀だから。

「あんたに、祝福がありますように」


「私のこと、必ず君が殺してくれるって、約束してくれない?」

 「私」のその言葉に、あの日の彼女は

「……いいよ」

 とだけ答えて、私の顔に両手を添えて、その朱色の目が埋まった美しい相貌を私の方へと近づけた。首元についた香水が、湿った空気の中にライムの匂いを発散させていた。思い出の中で甘酸っぱい匂いを纏っていたその女は、今もまた、美しいままで私の視界の中央にいて、私の手を握り、私の顔を、私のことだけを見つめている。私のことを狂わせたたったひとりの女。女の私をそうではない何かに変貌させた、魔性の瞳。

「煙草」

 私の眼球だけが動いて、左胸のポケットを指すと、彼女はそこから煙草を取り出して、その一本を私の口に差し出した。私は力の入らない口の端でなんとかそれを咥え、

「火」

 と、口の端から消え入りそうな息を漏らした。彼女は冷たい両目を伏せ、煙草と一緒になっていたチタンのジッポの蓋を開け、橙の炎を私の口元に持ってくる。ゆれる橙の色が、ジッポの側面に彫り込まれた優美な蓮の文様たちをてらてらと写しこんで映えた。間も無く、火のついた煙草が、芳醇な香りを私の口の中に送り出す。ああ、心地がいい。

 目の前の彼女は、相変わらず私のことだけを見つめ続けている。彼女は、あの日の約束を果たした。私はきちんと、彼女のために死ぬことができた。私の心のなど知りようもないはずの冷徹な朱色の目が、私のことを今、生の向こう側へ最後に一押ししようとしている。彼女は美しい瞳の向こうから私のことを見つめ、滑らかな形を持ったその両手が私の手に添えられている。

「いい、眺めだねえ」

 ああ、こんなときにも軽口が出るなんて、私ってどうしようもなく、「そういう」人間なんだな。彼女の視線がそのとき、一瞬だけ切れた。彼女は私の顔から私の身体へと目を移したのだ。そのとき、私の口の端からとうとう煙草が落ちた。視界の外側から立ち上る細い煙の向こうから、彼女はもう一度私のことを見た。何者にも惑わされない心のない精巧な顔つきが、やはりもう一度私に振り向けられていた。視界が定まらなくなっていく。それでもまだ、彼女の手の温度が確かに私に伝わっている。もしも私にまだ、満足な体力が残っていたら、よかったのに。

 私は驚いていたけど、その表情が、この気持ちが、伝わっているのかわからない。どうして彼女がそんな顔をするのか、理解できない。いや、理屈はわかるんだ。でも、感情がついていかなくて。

「おやすみ」

 彼女の声がする。その手の温もりさえも遠のいていく。私は、伝えられなかった言葉を、動かない舌と息を吸うことのない肺の間で押しつぶした。

 なんで、泣いてるの。


 誰もいない真っ暗闇の朝の部屋で、「私」は一番下の引き出しに両手をかける。木の面と面を擦り合わせながらまっすぐに引かれたその引き出しの中には、黒いベルベッドの布が一面詰め込まれている。私は布を剥がし、その下に一列に並べられた冷たい金属片のひとつひとつに目をやって、一番右端にある、最も新しい、錆びていない一本を手に取った。それを両手に持ち、そっと額に充てがうと、薄れ始めていた昨日の記憶が鮮やかに蘇った。あのひとの目の中に映った炎の揺らめきが、今も触れられそうなほど近くに見える。けれど、それはただの記憶なのだった。

 馬鹿なことをしているな、と思う。しんと静まり返った部屋の中にいるのは私ひとりで、朝を迎えた町の中に人気はない。私は手に持ったそれを元の位置に戻し、再び柔らかな布をかけてから、引き出しを押し込んだ。振り返る。部屋の中がぽっかりと開けているように思えた。ここには、誰もいない。

 私は立ち上がり、そのまま横のベッドに倒れこんで、暗い天井を見上げた。窓の格子の形が、そこに浮かび上がっている。息を吸い、吐いて、寝返りを打って、横を見る。壁があるだけだ。昨日までそこにいた女はそこにいない。優しくて頭がよくて気難しい、犬みたいにかわいい女だった。私とは全然違う女だった。そう思い返すうちに、彼女と過ごした時間が酷く美しく感じられ、けれど決してそんなことはなかったはずだと自ら打ち消した。死人はみんな、美しく思える。私は目を閉じて、真っ暗闇の中に身を沈める。そうすると、暗い影の中に、ちらり、ちらりと何かが揺れたように思えて、私は瞼を押し上げた。ライターの火の色、煙草の煙の白さが、あんなに美しく思えたことなんて、今まであったろうか。そう思って、私はうっかりと、昨日の記憶の中に入り込んでしまった。石畳についた膝の痛みと、炎の向こうから私をうっとりと見つめるあの女の目の形。

 今、この胸の中にある感情はなんなのだろう。この、胸の奥でじくじくと膿んで、燃えるように痛む、この沈むような高まりは。死んでいく彼女を見ていた時、私の頰を一筋流れたあの涙の正体は、なんだ。

「お前は、自分のために泣いているんだ」

 いつか言われた言葉は、ほんとうに言われたかどうかもあやふやで、一言一句合っているかもわからないのに、決して消えずに胸の中にあって、今もまた同じ調子で鳴った。

 私は、他人を殺すことで生き延びている、そんな自分の運命を泣いているのであって、死んだ人間のために泣いているんじゃない。そうだと思う。それで、合っていると思う。私は、誰かのために泣いてあげるような優しい女じゃない。愛情深い女じゃない。自分のために苦しむので精一杯で、他人の苦しみなんてどうだっていいんだ。

 でも、この胸の中には確かに痛みがあって、その痛みが誰のための痛みかなんてわからなくても、それでも、痛みがあるのは本当だった。本当じゃないと思いたかった。私がこんなものを持っているのは不釣り合いで、あり得ないことの様な気がする。それなのに。横たわっていた身体を起こし、ベッドの上に跪くようにして、自分の身体を抱え込み、額を床につけて、奥歯を噛み締めた。こんなにも、こんなにも、どうしようもない人間なのに、どうして、どうしてあなたは、私を悪人にした時、心まで奪ってくださらなかったのですか。

「わからない」

 わからないし、もう、これ以上考えたくなかった。もう、何も判断したくないし、選びたくもない。選ばれたくもない。善人であろうと足掻くことは、自分を正当化することは、みっともなくて、意地汚くて、なんて愚かなんだろう。私は、なんでまだ善なんてものにしがみつこうとしているんだろう。

 誰にだって祈りも呪いも届かない寝室の中、目の奥には、煙草を落としたその口で私に祝福を与える微笑みがぼうっと浮かんで、しばらく消えなかった。



「違う」

 俺はとうとう覚醒し、青緑色の扉が月の白い光の下に浮かび上がって見えているのに気がついた。記憶の中には、「彼女」の他に、知ってる奴がひとりと、知らない奴がふたり。そいつらの記憶に彩られた、ぶつ切りを張り合わせた未完成な彼女の物語。見慣れたあの朱色に貫かれて辛うじて繋がった、感情の記録たち。不連続な記憶の海からやっと出てきた俺の脳内は、ひとつの感情、ひとつの判断で満たされていた。違う。ちがう。凍えるような師走の空気の中に、俺の血で満ちた身体が、廊下に座り込んだままでいる。息を吸う。頼りなく弱り切った身体が震えている。俺の口の中で、音にならない言葉が組み上げられていく。あの目の色を思い浮かべる。間違いない。

 彼女にはまだ、震える心が残っている。

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