第236話 ◆特Aの死神 羽音はねについて

◆特Aの死神 羽音はねについて


エンマ大王から聞いたミキたちが探す特Aの死神の名前は、羽音(はね)ちゃんと言うそうだ。


7歳の時に交通事故で亡くなって地獄に落ちた。


なぜ地獄に来てしまったかと言えば、単なる手続きミスらしい。 こういう間違いは100年に一度だそうだが、あってはならないことだ。


では、なぜ死神になってしまったかと言えば、本人が天国には行きたくないとごねたかららしい。


エンマ大王はそんな羽音(はね)のことを不憫に思い、何かと可愛がっていた。


ある日、地獄での生活に退屈して、いたずらばかりするようになった羽音はねに、お仕置きとして死神の仕事をさせたところ、これがズバリ適役であった。


そして羽音(はね)は、死神としての実績を上げてレベルもどんどん上がり、ついに特Aになった。  ここまでの期間はわずか2年あまり。


今は9歳のツンデレ美少女らしい。



そして羽音(はね)は、最近自分の両親や暮らしていた家が急に恋しくなり、地獄から自らの痕跡を全て消し去った上で出奔したそうだ。


羽音の両親は事故の際に羽音と一緒に亡くなっているし、羽音の住んでいた家ももう別の家族が住んでいる。


おそらくそれを知った羽音は、ショックを受けたに違いない。


そして羽音は、そのままどこかに姿を消してしまったのだそうだ。



エンマ大王から聞いた羽音の情報はこんなところだよ。  それで陽子さん、これからどうやって羽音ちゃんを探したらいいと思う?


そこが問題なのよね。 本人に一度でも接触していたなら、あたしの霊視で探すことが出来るんだけど・・・


そっか。 それならまずは羽音ちゃんの情報を探してみようよ。  きっと写真とか本人が分かるような物が残っているはずだよ。



ちょっとミキちゃん、大切なことなんだけど、ひとつ聞いてもいいかしら?   珍しく陽子さんが真剣な顔をして聞いてきた。


いいけど、なにかな?


あたしたちって本当に死んでしまったのよね?


うん。 死んでる。 エンマ大王がやらかしてくれたからね!  陽子さんや104便の乗客の人は可哀そうだけど巻き沿いだね。


でも安心して。 あたしは復活の神だからね。  必ず全員元通りに生き返らして見せるよ。  ちょっと大神の爺さんが怖いけど。


よかった。 陽子まだお嫁にも行ってないし。


あはは  ミキは陽子のこの言葉に笑うしかない。


すると陽子は、少し俯き加減でほっぺたをぷくぅと膨らませて拗ねる。



だ、だいじょうぶだよ。 陽子さんが生き返ったら大沢グループのエリートさんたちとの合コンを開いてあげるから。 ネッ?


ほんとう?


うん、約束するよ。


ぱあっ


ミキには陽子の顔が一瞬明るく輝いたように見えた。



さあ、それじゃあ陽子さん行こうか!


うん。



こうして、あたしたちは地獄を後にし、いったん天国へと向かった。


天国に着いたら西の神(復活の神)の神殿へ行き、まずは自分と陽子を生き返らせのだ。


それから地上に降りて、羽音を探すための手がかりを調べて回る。


羽音にかかわった物(服や日常用品など)がもし見つかれば、陽子の霊視の力で羽音を見つけることができるかも知れない。


ただ、あたしには気になっていることがある。  羽音が今どんな気持ちで下界をさまよっているかだ。


自暴自棄になっていなければいいのだけれど、なにしろ特Aの死神なので抵抗でもされようものなら、町の一つや二つ消えてなくなるかもしれない。


それに9歳の女の子は、ミキにとっては全くの未知の生き物だ。


自分は中学生の時に性転換して女の子になったので、未だに完璧な女ではないと思っている。


ミキのことを知らない人からは、男っぽい性格だねとか言われる。


これは本来ミキの男として持っていたものが、内面から出ているのだろう。


こんなミキだから生まれてから15歳までの女の子のことは全く分からない。



9歳の羽音はいったいどんな女の子なのだろう。


エンマ大王にも臆さずに懐いていたのだし、いたずらばかりしていたので相当なおてんば娘なのかもしれない。


ミキは頭の中で、そんな女の子のことをモアッと想像してみる。


すると9歳くらいになった陽子の姿が頭の中に浮かんできたので、ミキはブンブンと頭を左右に大きく振りリセットしたのだった。

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