第131話 ◆神様の正体

◆神様の正体


「そりゃ、あたしだってこの先も不幸が続くのは嫌だよ~」

「そうだろ? だったら、写真の撮影は僕がやってあげるよ」

「えっ?」

と言うわけで、神様が要求してきた写真は鋭二が、撮影することになったのだった。


なんと鋭二は撮影とその準備のために、1週間も休暇を取って張り切っている。

この妙に力を入れている具合が、さすがのミキも怪しく思えてきた。

でも、どうしても鋭二と神様のつながりが、わからないのだ。


いくら大沢財閥の御曹司でも、親戚や知り合いに神様はいないだろう。

それに、神様の予言がことごとく当たっているのだし、鋭二に、そんな超能力があるはずが無い。


「超能力かぁ・・ んっ? まてよ・・・ そうか、わかったぞ!!」

ミキは超能力と言うキーワードで閃いた。

ミキの推理は、こうである。


まず、ミキに起こる不幸な出来事は、きっと陽子が予知しているに違いない。

それを鋭二が、なんらかの方法で聞き出して、神様のメールとしてミキに送っているのだ。

何しろ、ミキのコスプレの写真を欲しがるのは、ミキが知っている限りでは今のところこの二人だけだ。

二人が共謀している可能性は、大いにある。


あとは、どうやって、そのことを鋭二に自白させるかである。

裏を取るのであれば、陽子に直接聞いてみればいいことだが、さて、どうやって聞き出すか・・・

まぁ、まだ確固たる証拠が無いうちは、容疑者は泳がせておくことにして、尻尾を出すのを待つことにした。

・・・

・・


さて、鋭二はミキが勘付いたことも知らずに、コスチュームや小道具やらを嬉しそうに買い揃えている。

おまけに、一部屋を潰してスタジオらしきものまで、準備し始めた。

まあ普段から、フィットネス器具を置いてあるような部屋だから、どうということはないのだが。


それにしても、こういう事にエネルギーを使うのは、鋭二もやはり男なんだと思うミキであった。

やはり、鋭二が楽しそうに準備をしている間、神様からのメールも着信していなかった。


「ねぇ、やっぱりさ。 神様のメールも、もう来なくなったから、お詫びなんかしなくてもいいんじゃない?」

ミキは、それとなく鋭二にジャブを繰り出してみる。


「やっ・・ダメダメ。 相手は神様だろう。 言われたことを守らないと、今度はどんな罰ばちがあたるかわからないよ! それこそ怪我でもしたら大変じゃないか」

「でもさ~。 あたしは、もともと悪い事なんかしてないんだからね。 悪い事をしていない人に罰を与える神様なんかいるのかなぁ~。 なんか変だと思わない?」

「で、でもミキは、神様に悪態をついたんだろ?」

「ちょっと、鋭二さん。 あたしと神様のどっちの味方なのよ?」

「や、それは・・もちろんミキに決まっているじゃないか」

「ほんとう?」

「ほ、ほんとうさ」

「へ~え。 どもるところが、なんだか怪しいぞ!」

「な、なんだよ。 人がせっかく協力してあげてるのに」

ミキの言い方に鋭二は、ちょっと怒ったようだ。


「ご、ごめんなさい」

ミキは、これ以上攻めるのは問題だと判断して、いったん中断を決める。

「ねぇ、それよかお腹すいたでしょ」

「うん、もう腹ペコだよ」

「それじゃ、あたし、お昼の用意してくるね」

そういうとミキは、キッチンへ向かった。


冷蔵庫の中を見て、家にある食材で昼食のメニューを考える。

つい2日前にチャリでコケるほど買込んだわりには、冷蔵庫の中は何も入っていない。

「ありゃ~ これじゃ野菜炒めくらいしか出来ないぞ~」

そこでミキは、野菜炒めとチャーハン、中華スープを作ることにした。


野菜炒め用に切った野菜を少しだけチャーハン用に取り、更に細かく刻む。

中華なべを2つコンロにかけて、強火モード(オール電化なのでIHレンジ)で同時に炒めて行く。

ジャッ、ジャーーッ

左右の手を器用に使って、ほぼ同時に完成である。

あとは、鶏がらスープの素と調味料で中華スープを作ればOKだ。


そう思った時。

ウ゛ゥ゛ッ ウ゛ゥ゛ッ

メールが着信した。

件名:『奉納品について(督促)』

本文:『大沢美樹殿 添付目録に記載されているコスチュームを確認し、2日以内に本メールに添付の上、奉納(返信)せよ 神様より』

「なんだよ! これっ!!」

ミキは、ムカッとした。


リビングの方を見ると鋭二が、こちらに背を向けて携帯をいじっているようだ。

「やっぱり神様の正体は、鋭二さんなのか?」

ミキは、中華スープを作りながら、もう片方の手でメールに添付されている目録とやらを開いてみた。


【奉納品目録】 ※下記の商標他については著作権等はそれぞれの販売元に既存します。(神様)

その1:中華娘(のん○ん)

その2:アキバ風メイド娘(イメージは涼○ハルヒの憂鬱:朝比奈み○るのフィギュア風)

その3:一騎○千(呂蒙○明のブラックソックスのコスプレ)

その4:まー○ゃん先輩(どりるまーちゃんきっくVer.~)

その5:月城ミ○ナ(ニンジンジュース変身後)


はぁ~

またしても思わず深い溜息が漏れる。

「これって確か鋭二さんが用意していたコスチュームの中に全部あったよね?」

ミキは、コメカミに人差し指を当てて思い出そうとするが、鋭二が用意していた衣装がいっぱいあったので、今一つ断定できない。

『それにしても、だんだんエスカレートしてきてるよなぁ・・ やっぱり、ここらで釘を刺しておかなくっちゃ。 幾らなんでも、あたしは鋭二さんの着せ替え人形じゃないんだからさぁ』


ミキは出来上がった料理を盛付けてダイニングに運び、鋭二に声をかける。

「神さま~、お昼ご飯が出来ましたぁ♪」

「は~い」

鋭二が普通に返事をしてから、急にシマッタっと言う顔をしたが、ミキはあえて知らん顔をしていた。


「う~ん。 おいひぃーー♪」

ミキは先にチャーハンを口いっぱいに頬張り、自画自賛である。

正面に座っている鋭二の顔は案の定、少々強ばっているが、それは無視をする。

鋭二は、しかたなくミキと目線を合わさずに、チャーハンをスプーンで一口食べる。


パァ~ッ

食べた途端に鋭二の顔が、明るく輝く。

「うまっ!!」

「でしょ、でしょ! あたし芸能界を引退したらレストランでもやろうっかなっ!!」

「やっぱり、ミキの料理の腕前は最高だね~」

「えっへん。 そうよ。 言うなれば、あたしは料理の女神様ってところよ」


次回、「神様VS女神様」へ続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る