第27話 ◆再びピンチ?

◆再びピンチ?


さて、浜松町の駅に降り立ったミキは、早速、駅前でタクシーを拾い乗り込んだ。

バタンッ

「お客さん。 どちらまで?」

「あっ、日の出桟橋までお願いします」

「こんな時間に桟橋ですか?」

「えぇ、ちょっと用事があって」

「女の子がひとりで、あんなに寂しい場所にですか?」

「そ・・そんなに寂しい場所なんですか?」


桟橋は浜松町の駅から歩いても10分程度の距離なので、クルマならあっと言う間についてしまう。

「お客さん、本当にココでいいんですか?」

運転手のおじさんは、訝しげな顔をしながらミキに念を押す。


「ええ、たぶん」ミキは辺りを見回しながら不安げに返事をする。

「それじゃ。660円になります」

「ハイ。 それじゃこれでお願いします」

バタンッ ブロロローー

タクシーが走り去ってしまうと辺りは真っ暗闇になってしまう。


「うわー。 暗いけど夜景が綺麗ーーー。 日の出桟橋なのに夜中にうろうろ。 なんちゃって! アハハ・・・」

恐がりのミキは、何とか気を紛らわそうと一人ギャグを飛ばす。

「それにしても結構広い場所だな・・・いったい何処に行けばいいんだろう?」

ビクビクしながら、そろそろと埠頭の方に向かって進むミキの後ろから、近づく二人の男が・・・


ポンポンッ

「もしもし」

キャーー

突然肩をたたかれて、大パニック。 大きな悲鳴と同時にミキは、その場にしゃがみ込む。

こんなところは、もうすっかり女の子である。 剣道では県大会優勝の実力もいったい何処へやら。

肝心の竹刀も、どっかに投げ出して手元には見あたらない・・・


「もしもし、お嬢さん。 こんなところでいったい何をしてるんですか?」

「えっ?・・・」

ミキが恐る恐る振り返って見ると。

「お、お巡りさん・・・何やってるんですか? こんなところで?」

「おやおや。 それはこっちが最初に聞いたことでしょ! あんたいったいココで何をやってるんです?」

「え~。 そ、それは・・・」

まさか本当のことをここで言うわけにはいかないよな。


「うん? あんた・・・どっかで見たような・・・はて?」

暗いところで懐中電灯で顔を照らされると、物凄く眩しい。

「そう言われて見れば・・・う~ん。 まぁ、何れにしてもちょっと署まで来ていただきましょうか」

もう一人のお巡りさんもミキの顔をジロジロと覗き込むように見ながらそう言った。


「えぇーーー。 わたし何にも悪いことしてませんよーーー」

「お嬢さん。 まさか家出してきたんじゃないよね」

「ち、違いますって!」


んで、ココは某、駅前の交番。 時間はもう十時を過ぎようとしている。 当然ミキは、そわそわ落ち着かない。

あ゛ーー。 もう待ち合わせの時間が~

「ゴホン。 え~、これは君の所持品に間違い無いですか?」

そう言われて、テーブルの上を見ると、懐中電灯、おにぎり、竹刀、携帯電話などが並んでいた。

おにぎりがちょっと恥かしかった。


「君、何か身分証明書のようなものは持って無いかな?」

「ごめんなさい。 持ってません」

「歳は?」

「じゅ、16歳です」

「それじゃ、高校生だね。 学校名は?」

「な、何で学校の名前を言わなきゃいけないんですか?」

「んっ? むきになって、おたく何か悪いことでもしてるの?」

「なっ・・・別に悪いことなんかしてません!」

何かお巡りさんの方が悪人みたいじゃん。 ほんと腹が立つなぁ。

ムカムカ・・・


「ねぇ、わたし悪いことなんかしてないんだから、もう行ってもいいでしょ!」

「いや。 あんたは未成年なんでね。 お家の方に連絡して迎えに来てもらわないといけないんだ。 こちらで連絡するからお家の電話番号を教えてくれないかな」

「そんな・・・わたし10時にさっきの場所で人と合う約束をしてたんです。 どうしてくれるんですか! もう間に合わないじゃないですか!」

「女子高生が、こんな夜遅くにあんな寂しいところで待ち合わせですか?」

「わたしが誰と待ち合わせてたって、別に構わないじゃないですか!」

だんだんマジ切れになってくる!

もう少しで怒りの鉄拳がと言うところで ♪♪♪♪ ♪♪♪

ミキの携帯の着メロが鳴り響いた。

もしかしたら犯人かも知れない。 慌てて携帯を手に取り通話ボタンを押す。


ピッ

「もしもしっ」

「ミキちゃん? 無事なのか?」

「お、大沢さん? いったい何で?」

「何でじゃ無いだろ! 今いったい何処にいるんだ?」

「今ですか・・・えっと。 実は交番でお巡りさんとバトル中・・・ってゆーか」

「なんだって?」

「あっ、いや・・・なんて説明すればいいんだろ・・」

「君、電話の相手はお家の方? ちょっと替わってくれないかな」

若い方のお巡りさんが手をこっちに差し出す。


「ダ、ダメですっ!」

「それじゃ、今日は帰れないけどいいのかな? ほんとにココに泊まっていくの?」

「ん゛ーーー しょうがないなぁーー もぉ。 大沢さん、いまお巡りさんに電話替わるから」

わたしは拉致があかないと観念し、仕方なく携帯を渡した。


「えっ? おまわりさんて?」

「あ~。 もしもし」

「あっ、はい。 もしもし」

「ミキ?さんのお家の方ですか?」

「いえ、わたしはミキのマネージャーをしております芸能プロダクション「○△%☆★」の大沢と言いますが」

「おや、このお嬢さんは芸能人なの?」

「はぁ、ティンカーベルと言う二人組のユニットの1人ですけど。 無事なんでしょうか」

「ティンカーベル? あぁ、見たことあるわ。 そお、どおりでどっかで・・・ ふ~ん」

「今から、そちらに迎えにいきますので。 あの、どちらに伺えばよろしいのでしょうか?」

「あ~こちらは、浜松町駅前の交番です。 それじゃ、お待ちしてますよ」

ピッ

「あ゛ーーーっ!! ど、どうして電源切っちゃったの!」

「ありゃ、ゴメン、ゴメン。つい・・・」

「あ~ぁ・・・それにしても、大沢さんに怒られるだろうなぁ・・・はぁ~。 こっちの方が大ピンチかも」


次回、「ときめきトゥナイト」へ続く。

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