第14話 カマキリとアリ
「舞夢ーーー−!!!!」
「ごめんなさあーーーーいい!!」
「待たんかあ!」
「待てと言って待つほど私はバカじゃなああい!」
こんな会話を朝っぱらからずっとしている。先生との追いかけっこが始まって5分私も少し飽きてきた。この学校では2、3日前から結界が張られ、魔法を校内で使用できなくなっている。確か一般の生徒が魔法を暴発して何人かに軽傷を負わせたとか。そのせいで前までは簡単だった先生を諦めさせろ作戦が使えなくなってしまったのである。
「待てええええ!」
「あっそうだ!ちょっと止まってみよう」
そう小声で言って私は立ち止まった。そしたら先生は不意を突かれてスピードを落とすことができず、そのまま走り抜けた。しかも私が少し教えスピードを上げてやったんだ。当分戻ってこないだろう。ここの廊下は1kmあるからね。ちょうど通り過ぎる時に「この馬鹿力がああ」って聞こえたような気もするけどまあそこは気にしないでおこう。はあ、課題忘れてたよ。こんなことになったのも全てあいつらのせいだ。絶対に夏休みの課題もろもろ全部やってもらって、それからうちの大掃除してもらうんだから。それにクラスのみんなの何でも屋さんとして働いてもらおうかな。ああ、お金ががっぽがっぽ。
「舞夢ちゃん、顔顔。女の子なんだからもうちょっといい顔しなきゃ」
「こう?」
「そうそうそんなの!...いや、ちょっと違うもっとこう可愛い感じの」
「だから今やっとるわ!!」
後ろから風邪のように出てきた樹里に少し驚きつつも動揺を隠している。
樹里はいきなりスゥッと出てくるから怖い。前なんか肝試しで一緒に行ってたはずなのにいきなり消えていきなり現れるからマジなやつかと思って一瞬魔法攻撃しかけたよ。
「そんなことより樹里、ちょっといいかな」
そう私が言うとただ事ではないと感じ取ったのか、一瞬にして樹里の顔が怖ばった。そして口調が大人びて少し低くなった。私もこんな感じなのだろう。樹里は昔から目の前の相手の真似をする。そうやって身を守ってきたのだ。もう癖になっていて抜けていない。
「なんかあったの」
「うん、詳しいことは言えないから明日名門会議を開く予定。いつもの時間で」
「了解」
樹里はまた風のように消えた。私も樹里も今日の学校は早退した。そして名門一家の代表達に連絡し、明日の準備を整えた。名門会議は余程のことがない限り開かれない。だからこれで収集された時はどんな用事があってもキャンセルしてこちらを優先する。これがうちのルールだ。背中に夜風が冷たく当たる。芝生に座るとそこにはカマキリとアリがいた。現場的にはアリの方が優勢だ。もうカマキリもボロボロになっていて、情けなのかただ単に疲れたのか、アリが背を向けた瞬間カマキリの鋭い鎌に串刺しにされた。「危険な敵には情けをかけるな」
これが家の家訓だ。こんな風になる前に一気に仕留めてしまえと何度も親に言われた。このことをよく思わない連中もいるようだがそんな綺麗事聞き飽きた。
私はこの世界の現実を知っている。
明日の会議はこんな感じなのだろうか。
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