仲間と海


テレビでワイドショーをていると、

中継ちゅうけいのコーナーで海水浴の様子が映し出された。


「今日も暑いから、

みんな気持ちよさそうですね。」


暑そうに海にかるワンコが映ったのを見て、

ほっこりした気持ちになりつつ、

側で一緒にていた2人に向かって私は言う。


「確かに暑いよなぁ。

今日どっかの県で、

史上最高気温が出たらしいぞ。」


市販のカップかき氷を食べながら

つるぎさんがげると、

そらさんもチョコアイスを食べながら

話に加わってきた。


「夏は海で泳ぐ!

って奴が多いけど、

俺は子供の頃から川だったな。

つるぎ何処どこで泳いでた?」


「俺は滝。

高いトコから飛び込んで、

よく潜水せんすいしてたな。

・・お前は?」


「私ですか?」


昔から夏は家です。


やっぱりな。



どんなに練習しても、

私にはクロールの息ぎが、

どうしてもできなかった。


なので、

ぎの必要のない平泳ぎを、

すすめられて練習してみたが。


手足を動かしてもまったく進まず、

教えてくれた人の気まずい顔を見ながら、

私は静かに水中にしずんだ事がある。


見ていた人が言うには、

何かをさとりきった、

おだやかな顔をしていたそうだ。


思い出して静かに落ち込む私を余所よそに、

そらさんとつるぎさんは話を続ける。


「俺らの常識じょうしきだと、

泳ぐとしたら川か、滝か、湖だもんな。」


「確かにな。


海のイメージって、

危険な場所か、獲物えもの狩場かりばかのどっちかだし。」


え?


「何でそんなに極端きょくたんなイメージなんですか。」


疑問に思って私がくと、

2人は理由を説明しだした。


「俺らのトコの海って、

基本的には近づか無い場所なんだよ。


厄介やっかいな生き物の住処すみかだからな。」


「そ!

音速で泳ぐ600メートルえのさめとか、

800メートルを超えるとげ付きのたことか。


たまに小さくてキレイな奴もいるけど、

恐竜もコロッとく強力な毒持ちだ。


だからガキの頃は、

絶対に1人で海には入るなって言われてた。」


「弱肉強食の崩壊ほうかいした海ですね。

で、今も入らないんですか?」


の海のイメージが悪いのなら、


『これからもさそわない方がいいのだろうか』


と悩んだ私は、

くわしく聞くために質問する。


しかし。


私の心配を笑い飛ばす様に、

2人は楽しそうに話し出した。


「今は頻繁ひんぱんもぐってるぞ!

やっぱ海産物は美味いからな!」


さめの身も、

蒲鉾かまぼこ付けにできるし、

たことげをへしっちまえば、

普通に食えるぜ!


他にも、

マグロが主食の

でっかい貝とかもあるぞ!」


「あ、それも美味いよな!

・・でもよ、今の時期なら

『デンゲキオオウミウナギ』

が美味かったはずだな?」


思い出しながらつるぎさんが言うと、

ハッとした表情でそらさんが続く。


「そうか!

なら、そのれを追って

『オニイガセンボンガニ』

も来てるはずだ!」


晩飯は決まったな!


ちょっと行ってくる!


その叫びだけを残し、

2人はそのまま家を飛び出すと、

走り去ってしまう。




その後にやって来たいかずちさんに、

2人の言っていた生物の事を聞いてみると


『狩るのが危険な海の生き物!』


という図鑑ずかんのトップ5の中にいるが、

身がとても美味しいので、

仲間達はよくりに行くという事を

聞いた。



・・さそっても大丈夫そうです。

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