仲間達と父の日


今日は父の日だ。


興味がいたので、

みんなのお父さんの事をいてみようと

思う。



つるぎさんとこおりさんに

お父さんの印象をいてみました。


「強ぇーぞ!

後、スゲェ天然だな!」


笑いながらつるぎさんが言うと、

こおりさんが考えながら付け足す。


「天然というよりは、

物事に動じるのを見た事が無いな。


・・此奴こいつが3つの時に

片手で大猪おおいのししを担いできた時も


『おやおや。随分ずいぶんと元気だねぇ。』


で、済まされた方だ。父上は。」


「あー!そんな事もあったな!


・・そう言や、

兄貴が5つの時に庭に造った3段落とし穴に、

親父が落ちたんだっけ。


そこから無傷で出てきた後


『上手くできたね。

底に竹槍たけやりを仕込んであるのも、合格だよ。』


って、められたんだよな!」


「あぁ。

あの日はいわいで、好物が夕飯だった。」


そのまま昔話に花を咲かせる2人を残し、

私は別なヒトの話を聞きに行く。



いかずちさんとそらさんに

お父さんの印象をいてみました。


「父上の事?」


ふむ。


そう呟くと、

いかずちさんは思い出しながらゆっくりと

話し出す。


「武の道に、

真面目に取り組んでいらっしゃる方だ。

不真面目ふまじめな事はお嫌いだが、

冗談じょうだんが通じる柔軟じゅうなんさも合わせ持っておられてな。


俺が4つの頃、

武術の特訓で2本指で大岩に穴を開けた時


すごいないかずち!グーにチョキで勝ったな!』


おっしゃって、俺と母上を笑わせて下さった。」


この間実家に戻ったら、

その岩が記念にかざられていたんだ。


照れながら言ういかずちさんの肩を、

そらさんが軽くたたいた。


「良いお父さんじゃん!」


「そうだな。」


「俺の親父は、

菓子作りが大得意でさ!

昔から家族に手作り菓子作ってくれてたぞ。


ガキの頃、

おやつの時間が楽しみでな。


『お菓子の甘さは、

父さんのお前達への愛情と同じ量だよ!』


そう言って、

いつも沢山たくさん食わせてくれたんだ!」


良い父上だな。


だろ!


そのまま、

お互いの子供の頃を語り合う2人を残し、

私は他のヒトに話を聞きに行く。



せきさんに

お父さんの印象をいてみました。


「・・は?」


「何で喧嘩腰けんかごしなんですか。」


彼はいた瞬間

眉間みけん物凄ものすごしわを寄せ、

此方こちらにらんでくる。


「・・お前が父上の事を話せと言うからだ。」


「嫌いなんですか?」


彼は深い溜息をつき、

手元の本に視線を戻しながら先を続けた。


「嫌いなのではない。

・・色々あって苦手なだけだ。」


「色々?」


「・・俺の父は母と仲が良くてな。


『私の姫君は、何時いつも世界一美しい。


その漆黒しっこくの瞳は、

天にきらめく星々もうらやむほど輝き、

私をうつす。


その声は、花のみつの様に甘い旋律せんりつ

私の名をつむぐ。


あぁ!

このように美しい姫君への愛を、

私はどの様につむげばいいのだろう!』


・・と、平気で言える心の強い父だ。」


うわぁ。


「それを幼い頃から聞かされてみろ。

此方こちらの方が照れ臭くて仕方なくなる。

・・苦手にもなるだろうが。」


「なるほど。」


せきさんが時々

物凄ものすご台詞せりふを平気で言えるのは、

その影響えいきょうですか。


見事みごとに受けがれてますね。」


口から思わず感想がこぼれれた瞬間、

無表情のせきさんにほほを思い切りつねられる。


が、だと?」


「何でも無いです。」


そうか。


静かにほほを解放された瞬間、

私は彼の側から逃げ出した。



「・・全員の話の印象でわかったのは。」


それぞれがお父さんに似ている事。


「それに。」


・・みんなの子供時代が、

物凄ものすごく気になった事だろう。


「でも一番わかったのは、

みんなが自分の父親を尊敬そんけいしている事かな。」


せきさんは気付いていないだろうが、

彼は父親の話をしている間ずっと。


・・少し、

ほこらしげな表情をしていたのだ。


口ではああ言っていたが、

母親を大切にしている父親の事が、

ほこらしいのだろう。


(本人には指摘してきしないでおこう。)


少し、

微笑ほほえましい気分になった私だった。




その後、

他のヒトにせきさんの父親の事をいてみたが


「「「「こいつにそっくりだ。」」」」


と、

全員に断言されたせきさんが落ち込み、

なだめるのに3日かかってしまった。

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