第91話 進化するエル・デルタ
初夏の市場は異様な活気に
今までより多くのガレオン船が沖に停泊していた。それらと陸の間を、おびただしいハシケが往復していた。ハシケは両側に何本もの
ヨハネは、街の郊外にある丘の上に立って街と港の様子を眺めていた。
港の様子は短い間で明らかに変わっていた。ガレオン船の停泊数は増え、ハシケは数えきれない程になった。交易品の量は増える一方だった。また、ガレオン船から送り込まれる人々も変わった。
今までは、茶色い肌に黒い髪の小柄な人々が入ってきたが、今ではそれに加えて黒い肌で手足の長い人々も港に運ばれてきた。奴隷や奉公人が足りなくなっている証拠だった。それでも奴隷と奉公人の価格は値崩れしていなかった。
人が欲しがられているのだ、奴隷商会で六年間働いているヨハネはそう考えた。
次にヨハネはエル・デルタの街並みを見下ろした。北の大山脈から流れ出る大河の下流には、幾つもの二等辺三角形の中州が規則正しく造られていた。それらに加えて新しい三角の小島が幾つも海に向かって新たに作られ始めていた。たくさんの人足たちがそこで立ち働いていた。ヨハネもその中に交じって週に六日は働いていた。定期的に大増水する大河に流されないように、それらの小さな三角の島々は大石で土台を固められ、周囲は大きな石垣で守れられていた。その石垣で固められた
食料や衣服を運ぶ大きな馬車、奴隷を運ぶ黒い馬車、そしてここ数月で増えたのが、個人を運ぶ馬車や十人近い人間を運ぶ
ヨハネは街の変化の目まぐるしさにため息の出る思いだった。彼はしばらく市場を眺めていたが、人を探しに丘を降りて海辺の市場に入って行った。
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