第25話 望郷
最後にヨハネは視線を右、つまり北に向けた。
エル・デルタの北には、この島の
その先はここからは見えなかった。
ただヨハネはその山の先を知っていた。
その先は、これまでとは反対に山が徐々に低くなり、やがて、さほど広くない砂の土地が現れるはずだった。
その砂地は大山脈からマール・デル・ノルテと呼ばれる北の海に向かって台形が飛び出したような形をした土地だった。その北側は低い山が壁のように立ち、北の海からの風を壁のように防いでいた。
しかし西の海岸から吹く強い砂嵐が常にその土地を
大山脈の雪解け水が河になってその土地に流れ込んでいたが、その河はそこを潤す事なく湖に流れ込んだ。その湖の水は真水ではなく汽水だった。その湖から流れ出た河は海が入り込んだ入り江に繋がり、マール・デル・ノルテへと通り抜けた。
砂と塩水と強い海風、それが砂の土地のすべてだった。
もちろん人が住むには適していなかった。この土地に興味を持つものはなく、ただ地生えのワクワクたちが小さな村を作り、
ヨハネは北に霞んで見える山々を眺めて、遠い故郷を想った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます