7月27日

 この前不思議な光景を見たんだ。今日はその話をしようと思うよ!

 さっき通った狭い道あったろ? そうそう、俺の家の前の道だよ。

 ああ、以前あの道にバナナの皮が落ちてた時があったんだけどさ。

 え? なに? それで滑ったってオチかって? はは、まさかぁー! 滑るワケないじゃーん!



 俺はな。



 そこになんとプリンが落ちてたんだよ。

 え? なんでプリンなんか落ちてたのかって? さあ、そこまでは。

 でも、こうは考えられないかな?

 プリンがとっても好きな人がいるんだ。それはもうプリンマニアと呼べるほど。

 一日三食食後には毎日プリン。いや下手すると一日五食はプリン食べるほどに熱烈なプリンマニア。

 その日も彼はいつも通りプリンを買いに出掛けたんだ。うちの裏にあるミ○ストップにね。

 で、プリンを買った。家路をご機嫌で急ぐ彼。

 台風なんかへっちゃらって感じで、鼻歌なんか歌いながら。

 え? あ、そうそう!ドラゴンボールZとか歌いながら! 俺もそう思った! 俺も俺も! 気が合うね!

 でもきっと我慢できなかったんだろうね。家路に着くまで。

 彼は食欲を抑えきれずに、歩きながらプリンを食べてしまおうって考えてしまった。

 そして俺の家の前で袋からプリンを取り出した。


 それが過ちだったんだ。


 舌なめずりをしてプリンの蓋を開ける彼。にんまりとして彼はプラスチックのスプーンを取り出した。

 その時突如突風が――


 吹き飛び、舞い上がる傘。

 はっとする彼。

 反射的に彼は傘に手を伸ばす。

 傘は吹き飛ばされる寸前で彼に掴まれた。

 だが、彼はしまったと目を見開く。


 振り返る彼。


 瞳にはゆっくりと落下していくプリンが映った。

 無音の世界。

 そしてスローモーション。

 回る回るよ世界は回る。


 中島みゆきの曲って暗いの多くない?

 うちの親父が大好きでさー、いっつもカラオケで歌うから。場の空気読んでほしいよね。

 え? 話が変わりすぎ? お前こそ場の空気読めって? ゴ、ゴメン。話し戻すわー。



 あっ――と彼は叫んだ。

 無常にも辺りには乾いたプラスチックの音が響き渡る。


 カラーン! カランカランカラン――ぷりん


 地面に激突した衝撃で容器の裏についてるポッチが折れて

 にゅるんと!!

 

 プリンがにゅるんと!!!(チラ)


 後には土砂降りの雨の中呆然と立ち尽くす彼とプリンのみが残った――

 えっ?プリンは生で落ちてたのかって?そうだよ。

 ちょっと崩れてたけどね。

 え? 絶対嘘だ? 失礼なっ! 本当だっつーの! 嘘じゃないって! ホントホント! いやマジで。


 容器は端に転がってたんだって! スプーンも!


 とにかく俺が見たのは彼とプリンの物語、その結末だったんじゃないかってそう思うんだよね。

 綺麗だったよプリン。

 激しい雨に打たれてやわらかいプリンがね


 こうプリンプリンって――


 プリンプリンって……(チラッ)


 プリンプリンって……(チラッチラッ)



 プリンプリ――あれ? どこ行くの? ねえ?

 プリン買いに行く? 食べたくなった? ああ、そう。


 あ、じゃあ俺も俺も。俺の分も買ってきて。プッチンプリン。

 本当だからな! 笑ってんなよっ! 本当に揺れてたんだってーっ!

 お前も気をつけろよーっ!




 えっと、ダジャレでオチは弱いから駄目と――(メモしながら)

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