第11話 天文部編 part2
流れ星。それはわずか数秒のために命を燃やし、その姿は美しく、儚い。燃える姿に人は歓喜し、消えれば、何もなかったかのように人は消え去る。生まれることにも消えゆくことにも後悔をしない。それはまさに青春に似ている。けれど黒田が最も重要に考えるのは燃え初めでもなければ、消えゆく姿でもない。燃えているその瞬間だ。例え数秒の出来事であろうと燃えている瞬間が美しければ始まりも終わりも美しく見える。
「なあ、何か足りなない気がするんだ。なにかこう、大切なものが」
ある日の夜、天気は晴れ。絶好の天体観察日和として、天文部は活動を行っていた。
「何か足りないって?」
黒田の発言に須藤は反応した。天文部は実際所属人数が五人以上いた。しかしながら出席しているのは毎度三人程度。学業、バイト、肩部。あらゆる理由から天文部は二の次だと考えられてしまっていた。
「俺たちはいつも集まって、駄弁って、たまにお天道様を馬鹿みたいに拝んで、いったい何してんだろな」
「何言っているんだ。夜に太陽は出ていないじゃないか」
黒田は須藤を横目に見て、また視線を逸らしていく。きっと須藤は質問の意味を理解していてこう言っているんだろう。そうわかっているからこそ須藤に対して、そして自分に対してやり切れない気持ちが込み上げる。
「星なんてものはいつも点。これを見るための部活動に所属している君も僕もしっかりと愚か者に感じるが?」
その通りだ。須藤は的を射たことを言っている。しかしながら仮にも青春を燃やす部活動というものだ。それなりにやったと言いたいし、なによりこのままでは達成感が足りないのだ。この満たされない欲求。それを彼は満たそうとしていた。
続く
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