世界管理人

チョーカ

0話 始まり

私が生まれたのは、


裕福な辺境貴族の邸宅の一室でもなく、


滅びゆく王国の王宮の隠し部屋でもなく、


慈愛と光に満ち溢れた神殿の祭壇でもなく、


深き闇の底に蠢くナニかの中でもなかった。


私が最初に認識したのは、炎だった。


宇宙の中の塵がぶつかって、ぶつかって、ぶつかって、ようやく星の形をとり、そのエネルギーを噴出し、自身を温めているのだ。


ある意味では、それは私の産声だった。


私は、生まれた時の既に、私を知っていた。


私は、この星、この世界だった。


どのくらいこの世界かというと、後日太陽系を丸ごと一個消して引力の関係で近くの恒星同士が衝突しそうになって慌てて元に戻すことができた。


それには、一切のエネルギーは要らなかった。考えるのと同じようにできた。


それが、私が世界に縛られない存在であり、そして世界を自由にできる…つまりは世界自身である証明だった。


だが、そんな全能の存在になった私にも、わからない事があった。


それは、何故私は生まれたのだろうか、というものだ。


突き詰めていうならば、『私は何なのか』という事だが、そんなことを考えるのがナンセンスだということぐらいわかっていた。


なので、いくらか具体的にしてみよう。


『私は何の為にのだろうか?』


幾ら何でも、何もない星に突然私の様な……意思だろうか?が自然に生まれるわけが無いのだ。


いや、仮にこれ(私)が偶然の産物だったとしても、かなり説明に難儀するだろう事象があった。




私には、前世の記憶があるのだ。

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