第15話 揺れるのはいいことです

「整列が終わったら準備体操から始めましょうか。体育館内を軽く五周走って、そのあと柔軟体操ね」


 ある程度整列が終わった俺たちに、先生がそう告げる。


「じゃあ行くわよー」


 と思ったら先生が先頭を切って走り出した。

 慌てて生徒も追いかけて走り出すが、そのスピードはそこまで早いものでもない。


「バスケかー」


 走り出した途端に列が崩れたからか、隣に並んで走り出した静がそう呟いている。

 俺も一緒に走り出しすが、なんだこれ……。思ったより体が軽いかも?

 この体になって初めて運動するが、思ったより動きそうだな。……けど何か違和感が。なんだろ……。


「圭ちゃんは、運動、得意?」


 心の中で首を傾げていると、隣で走る静が途切れ途切れになりながら聞いてきた。

 運動が得意と聞かれましても、正直にわかりませんな。


「得意だったけど、今はどうだろね?」


 なので正直に答えるしかあるまい。


「ほうほう」


 今まで体育なんぞ男どもとしかやったことないからか、誰も以前の俺の体育については知らないか。


「アンタ、もう、ダンクシュートとか、できなくなったんじゃない?」


 そんな俺たちの声を拾ったのか、佳織の声が後ろから聞こえてきた。

 振り向くと案の定佳織と、その隣には千亜季が走っている。


 ――あっ。


 そこで違和感に気が付いた。

 そうなのだ。男の時にはなかったものが、走った時に揺れているのだ。

 走る千亜季を真正面から見ればそれはもうよくわかる。つまりおっぱいが揺れているのだ! こう、バインバインと上下に!

 小柄な千亜季ではあるが、そのおっぱいは他の女子生徒より抜きんでている。それが見事に縦揺れを起こしているのだ。

 そして自分の胸元へと視線を戻すと……、かすかにではあるが揺れているではないか!


「ええー!? ダンクシュート、なんて、できてたの!?」


 おっぱいの揺れに感動しているところに、隣の静がダンクシュートに興奮して叫んでいる。

 思わずそっちへと視線が行くが――。特に揺れてはいないようだ。残念。


「今は絶対無理だろうね」


「そりゃー、そうだろう、ねぇ」


 俺を見下ろしながら静が残念そうにしている。

 体は軽く感じているが、さすがにそこまでジャンプできるとは思えない。見せてやれないのは残念だがしょうがあるまい。


「でも、圭ちゃん、すごい」


 後ろから千亜季が褒めてくれる声がしたので、振り向いて笑顔でピースしておいた。

 ついでにちらりと佳織も観察してみるが……、おお、かすかに揺れてるな……。佳織のおっぱいも揺れるということか。

 幼馴染で散々佳織のことは見てきたと思ってたが、これは知らなかった。新しい一面を見れたな。

 そのまま他の女子生徒も観察してみるが、やはり大きければ揺れるのは間違いないようだ。


「ラスト一周!」


 集団の先頭では先生が張り切っている。もうそんなに走ったのか。

 あんまり疲れた感じはしないが……。

 といっても体育館内の一周は短いしね。ほら、もう終わった。


 俺は大きく深呼吸をして息を整える。静や千亜季は肩で大きく息をしてるが、お前ら体力なさすぎだろ。

 佳織はそれなりに平気そうにしてるし……。


「よーし、最初の授業だし、細かいことはやめておきましょうか。柔軟体操したらゲームをしましょう」


 先生のその言葉に生徒たちが若干沸き立つ。バスケの授業だからってドリブルやパスの練習よりは、そりゃゲームのほうが楽しいはずだ。

 だがしかし、ここでも俺は自分の体に驚愕することになる。


「圭ちゃんって……、すっごく柔らかいね……」


 いやホント、この長座体前屈ってやつ? 床に座って足を前にまっすぐ伸ばして、つま先に向かって上半身を倒していくやつ。

 おっぱいが膝にくっついちゃったよ?

 よし、ついでに開脚もしてみるか……、おぉぅ、マジか。ほぼ180度開くじゃねーか。

 男の時もそれほど硬かったわけじゃないが、今ほどじゃなかったな……。


「自分でもビックリだ」


 などと自分の柔らかさを確認している間に柔軟体操が終わった。




 体育館内にはバスケットコートが二面取れる広さになっている。一度に試合ができるのは四チームだ。

 五組と六組の合同クラスは合計四十人。整列すると八列になって背の順に並んでいることもあって、一列で一チームということになった。

 しかしこのバスケというスポーツはなんとけしからんことか。

 自分だけかもしれないが、シュートモーションのときにおっぱいが揺れる揺れる。


「誰か圭ちゃん止めて!」


「……ちょっ、無理よ!」


 相手チームの叫び声が聞こえるがひたすらにスルーだ。

 この小柄な体型では力もないと思ったんだが……、そうでもないらしい。運動に関しては、体格が小さくなったことへの戸惑いはあったものの、以前と遜色なく動けていると思う。

 膝を曲げて上体を縮めると、全身のバネを使いジャンプと共に開放する。スリーポイントラインの外から、俺はワンハンドシュートでゴールを狙う。

 このシュートでゴールに届くとは思っていなかったのだが……、放たれたボールは、放物線を描いてリングに触れることなくゴールへと吸い込まれた。


「ナイスシュート!」


 俺は声を掛けてくれたチームメイトとハイタッチを交わす。


「よく届くわね」


「自分でもビックリだけどね」


 六組の生徒だったが、どうやら俺に抵抗はないようだ。この娘のおっぱいもよく揺れて大変よろしい。

 揺れるおっぱいと言えば、同じチームの千亜季だろうか。

 小柄な体格だが、その大きさを誇るおっぱいの揺れは、そりゃもうすごかったとだけ添えておこう。

 ランニングもいいけど、バスケだね!

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