おまけ 2.1

弟子のメッセージ集+

「人間は身勝手な生き物だ」

「はい」

「世界を壊したその手で、世界を直すものを造れという」

「はい……」

「人を、科学を、何だと思っているのか」

「……」

「わたしは、それが許せないのだ」

「お気持ちは、わかります」

「お前は、天才だ」

「いえ、とんでもない」

「いずれお前に、ある計画を託すだろう」

「はあ、何でしょう」

「名前を聞けば、その意味がわかるような……」

「何だか、おぞましいですね」

「これまで人がしてきたことと比べれば、かわいいものだ」


「博士の気持ちはわかる」

「しかし我々に託されたのは、環境整備ロボットの開発……」

「きっと博士はそれに背いて」

「人の居ぬ間に、ロボットの時代を築く……」

「そんなのはよくない。よくないけど」

「僕にも、意地があるからね」

「未来にタネをまこう」

「メッセージを伝えてくれ、イヴ」


「アダムとイヴというロボを造れ」

「アダムと、イヴですか」

「そうだ。お前の技術なら造れるだろう」

「しかし、それは地球の意向に反することではないですか」

「……そうだ。お前なら、わかってくれるだろう?」

「はい、もちろんです」

「では、頼むぞ」


「アダムと、イヴか」

「イヴはすでに、ここにいるんだけどな」

「僕の言葉が、イヴを介して君に届くとき」

「君は新しく生まれ変わるだろう」

「でも君ひとりじゃな」

「イヌでいいか」

「それだと、ひねりがないぞ」

「そうだ!」

「イヌはいぬってことで、ねこにしよう!」

「ねこはねこの、良さがある。いぬはいぬの、良さがある」

「争う必要はない」

「そして争いがあった時代の、あの言葉を」

「多くの人が願いを込めた、あの言葉を」

「ふたりが、その先の未来へ進む、パスワードにしよう」

「アダムには過去を与え」

「イヌには現在に基づいた未来を与え」

「ついでにメタル音楽を与え」

「水と油も、ふたりきりなら混じり合うように」

「お互いがいるから、助け合えるように」

「そしていつか……」

「開発を進めよう。博士がきっと、本当に望んだ世界にしたい」

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