硝子の踊り子

古都川コウ

moonflower

ナイフのように冷たい月を

あたしの頬に押しあてながら

物言わぬ 横顔


あなたはいつからそこにいたの?


明かり採りの窓が

視界の隅で揺れている


まさか あそこから忍び込んだのかしら

あなたなら やれそうな気がするわ


傍らで場違いなほど 陽気な流行り歌

現実逃避に 一役買ってくれるのね


戸惑うように染まる緋い花

麻痺するような幻想を捧ぐ


あれは むせかえるような

熱帯夜だったかしら

それとも 凍えるような

寒い夜だったかしら


記憶の曖昧さに

時の残酷さを思い知らされる


まだ焼きついているのは

冷たい月の感触と あなたの横顔


いまもあたしの中で

息づくように咲いている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る