Thought Experiment
「ひとつ思い付いたことがあるんだが」
この世界に根を張り始めてまだ間もない頃――毎晩の日課となりつつある、屋根上での談話タイムでのことだった。隣で寝そべっている親友の久也が、ポツリと話を切り出したのである。
「ん? なにー?」
ウトウトし始めていた拓真は、久也の方へ寝返りを打って頬杖ついた。
頭の後ろで腕を組んで夜空を仰いでいる久也が、眼球だけを動かして応じる。
「人口の濃度勾配に従って人の多い地球からこの世界へ生贄が流れてたんだとしたら、たとえばこの世界の方が人間の総数が多くなったりしたら、逆方向の転移も有り得たんじゃないか?」 (*詳しくは「23.形無く象るモノ」を復習しよう!)
「多い方の人口……って――はっ! そうだね!?」
相変わらず久也は聡明だ、大変なことを何気なく考え付くのだから。拓真は思わず頬杖ついた体勢から起き上がった。
「まあ、今となっちゃ二つの世界を繋ぐ回路は全部閉じたんだからどうしようもないんだけどな」
「そうだけど……いつかは家に帰れる可能性もあるんだよね?」
「辿り着いた先では死体状態になってるかもしれないぜ」
「うぐっ。それはやだなぁ」
「大体お前、こっちの世界が地球の人口を追い越す可能性の方がめちゃくちゃ低いんじゃないか」
諦めたように吐き捨て、ごろりと久也はこちらに背を向けた。
拓真はなんとなく星空を見上げる。この世界が地球の人口を追い越すシナリオを想像する。
1、よほどこっちが繁殖しまくるか。
2、まだ知らないだけでこの世界にはもっとたくさんの集落があって人が住んでいるか、それとも――
「地球崩壊して人類が滅亡の危機に瀕する、とかかな」
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