変な音
地元の祭りの手伝いがあるだとかで父が出掛けて行った。
暮れていく町は、暑さと湿気だけで、ただそれだけ。
集会場のスピーカーからは、テレビのまねごとをしている大人が騒ぐ。
窓からは人だかりと、汚いテントの群れ。
蛍の光の様な照明は温もりと終末を感じさせた。
いい加減暑い。
と、開けられた窓はカビだらけで、立てつけが悪く、
ガガッ
と、音を立て半分くらいで動かなくなった。
毎日開けないからよ。
と、母は、決まり文句を吐き、音を立てながら部屋を出た。
スピーカーが絞られると、微かに他人の声が聞こえた。
流動的な音で、川の様な音。
時々笑い声と、叫び声が聞こえた。
塞ぎたいのに触れない窓。
灰や黒が混じった窓。
僕のスウェットと変わらない。
嫌悪と希死念慮が消えない部屋。
居場所はここにあってここにない。
予算が限られた花火は小規模で、
5分もなく終わる。
風が通らない部屋。
半分だけ空いている窓はそのままで。
脈打つ心臓の音が大きく聴こえた。
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