堰を切ったように走った

クチナシ

波止場

立ち入り禁止の門を避けて波止場へ入るアベック。

まずいよ~

と言いながらどこか楽しげな彼女。

大丈夫だよ。

と、彼氏は彼女を誘う。


私は、人生初めて煙草を吸おうとしている。咥えた煙草にジリジリとジェットライターを近付け、カチッと火を着ける。


二十歳を過ぎた私の反抗。


遠目に眺めるアベックは困難を乗り越え、立ち入り禁止の波止場へ進む。


砂浜を歩く私は、むせて咳き込む。

良く晴れた空と、静かな波打ち際。


遠目に見るアベックは抱き合ったまま動かない。

純粋に抱き合っている二人の気持ちを想像し、少し幸福になる。

ただ、私には縁がなくて

抱き締めたり、られたりした記憶も無くて。

ただ、想像するしかなくて。


実際を経験すると、どれだけの差が有るのだろう。


枯渇しかけている 何か が私を慰め、幻想的という言葉が頭をよぎった。








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