自意識
陽が沈み、辺りが薄暗い。
春が過ぎたやるせない月。
雰囲気が落ち着く喫茶店に入った。
店内には高校時代の級友がいた。
アベックだった。
自分は窓側に座り、ミルクたっぷりのアイスコーヒーを注文。
高校生だった頃は接点がなかった二人。
無論 私と。
私は、クラスで浮いていた。
無論 人間関係的に。
一方、アベックの二人は特に目立つ事もなく、優等生タイプだった。
男性の方との会話は、恐らく
「あっごめん」(私が不注意で彼にぶつかってしまった)
女性の方との会話は、恐らく
「あっごめん」(私が落としたプリントを拾ってくれた)
あの当時、付き合っているとは微塵も感じなかった。
アベックの方から(偶然)聞こえてくる高校時代の思い出話は、別世界だった。
その後に続く
結婚式の予定や、共通の友人の話。
共通の趣味。明日の話。
夕飯が美味しかった。
この後、お酒でもいかがですか。
彼らはブラックコーヒー。
私はミルクたっぷりのアイスコーヒー。
何だか勝手に、私は大人になれていない気がした。
やるせなさはずっと続いていて
生き辛さもずっと続いていて
寂しさが続いていて
倦怠感が昔より強くなっていって
誰かに寄り添いたくて
助けてほしくて
助けてほしくて
ただ、助けてほしくて。
窓の外には中学生らしきジャージのアベックが歩く。部活帰りの空気を連れて。
街灯や、看板が煌めいていて、二人のアクセサリーでしかなくて。
その中でも私は喫茶店にいる他人でしかなくて。
青春時代の万華鏡を見つけられなかった私は、探そうとすると見つからない。
と思いながら、永遠と迷って、拗らせて、このまま続いていくと
ふと、思う。
ばらばら なのだろう。今、もしも 見つけたとしても。
汗をかいているミルクアイスコーヒー。
コースターは私の所にだけ無く。
受け止めてはくれなかった。
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