第9章 帰還
帰ってきた
私達は再び、船に乗っていた。
『あの島にて待つ』
DCに届いたメッセージは、動画ではなく、この一文だけだった。たった一文、というのがとても不気味だ。
あの島、とは私達が戦ったあの無人島のことだろう。
誰もが罠だと思ったが、拒否した場合何が起こるか分からないため、全員で向かうことになった。 無人島に船が着く。景色はほとんど変わっていない。
この島でユウは……。
「やつでさん。やはりあなたは船で待っていた方が」
私の心情を察したのか、氷華ちゃんが私に待機するよう提案する。
でも私は首を横に振った。
「ううん、大丈夫。行こう」
ユウが帰ってくるまで、私達が地球を守らなければならない。私だけ休むわけにはいかない。
「そうですか。では行きましょう」
氷華ちゃんを先頭に、空くん、私、車田くんの順に島の奥へと進んだ。
前に通ったエンダー道を進みながら、私達は湖へと向かう。
しばらく歩いて、湖の場所に着いた。
「……誰かいる」
空くんが凹みの中心を指差す。確かに誰かいる。遠すぎて誰なのか分からない。
私は持参していた双眼鏡で、空くんの指さす方を見る。前回は、遠すぎてエンダーの姿を確認できなかった。その反省を生かして、今回は双眼鏡を持ってきたのだ。
双眼鏡のレンズに、その人影がはっきりと写った。
私はそれを見て、驚愕、安堵、歓喜、さまざまな感情が心の奥から噴出した。
そこにいたのは……。
「ユウっ!!」
私は双眼鏡を放り、誰よりも先に枯れた湖を下った。
湖の底にいたのは、私のナイト、子供の頃から私を守ってくれた、私の大切な人。不動ユウ。
力いっぱい走り、彼に近づき、抱きしめる。
この匂い、この感触、肌触り。間違いない、ユウだ。耳元にヘンテコな機械を身に着けているけど、これは本物のユウだ。
「……やつで」
ユウは私の頭を優しく撫でる。
良かった。本当に良かった。生きてて良かった。
「今までどこにいたの。心配したんだよ」
私は泣きながらユウに問う。涙でユウの服が濡れる。
「いろいろあってな。だが安心しろ、これからはずっと一緒だ」
この声を聞くと、とても安心する。
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