1-8 髪飾り

 マリアンナからドレスのプレゼントをもらった後、前後してあるパーティーが行われることを知った。パーティーといっても私自身社交界には出ていない年齢であるので、公式のものではないらしい。ガーデンパーティーであり、当家の庭で行われる小規模なものだということだ。


 完全に病気から復帰して、まだ無理はしないよう注意をされているが、自分の家のパーティーくらいだったら大丈夫ではという話になった。実はこのパーティー、まだ社交界に出ていない子供たちで交流を深めるために意味合いもあるらしい。社交界でデビューといっても、大人の世界にでることであり。貴族社会においてのつながりは小さいころからあるようだ。父もそういうことにあまり熱心ではなく、とにかく溺愛している娘を外に出したくはなかったようだ。母のことも身分などのことも、まだネチネチ探ってくる連中もいて、そういったことは極力避けていたようだ。

 母はもともと根性が座っている持ち主なので、そういった些細な嫌がらせは気にしていなかったらしい。ただ母も身重な状況であるだけに、今は出席が難しそうだった。そこで当家の花として、父と兄と一緒にアリーシアもパーティーへ参加することになった。


 小さなパーティーといっても、それなりに人数は出てくるらしい。身内の食事会レベルでしかアリーシアの記憶にはないので、ある意味デビューに近い位置づけなのだろう。その証拠に、朝から大きな荷物が届いたのだった。


 贈り人は父の両親。当家の元当主であった祖父母は、現在は領地内の避暑地でのんびり過ごしている。

 完全に現役引退をしてしまい、時折孫たちへのお土産などをたくさん贈ってくるのだ。

 今回はどこの経由で知ったかわからないが、ガーデンパーティーへ着るドレス数着、靴、肌着、帽子、日傘、髪飾り。びっくりするほど届いた。父はこんなにいらないな~とのんきに言っていたが、母は恐縮していた。兄へのお土産も、兄が書物が好きらしいので貴重な本をたくさん贈ってきたようだ。


 メイドにプレゼントを部屋に置いてもらい、一緒に中を開けていると素敵な髪飾りがあった。白いレースに束ねられた、透明なガラスビーズで形を施された髪飾り。ガラスビーズはとても繊細なもので、高価であるのは一目見てわかった。これはマリアンナのドレスにあう髪飾りだ。


 メイドと話していて、マリアンナのドレスを直して、この髪飾りを使ってガーデンパーティーに出席することにした。もちろん祖父母にはお礼のお手紙をその日に書いて、メイドに渡した。

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