睡眠学習

『わあ、八秒だって!』

『すごーい! 逢原さん、速ーい!』


 隣で五十メートル走をしている、女子達が騒がしくなる。

 どうやら逢原が高タイムをたたき出したらしい。八秒が女子の平均よりどれほど速いのかは分からないが、女子の歓声から察するに良いタイムなんだろうな。


「(そういやあいつ、昔から速かったけ)」


 逢原と史郎は中学も同じだから知っているのだが、あいつは運動部でもないのに意外と体力があった。五十メートル走はもちろん、ソフトボール、水泳、マラソン、あらゆるスポーツをそつなくこなしていた。毎回体育の時間に史郎が「逢原さん凄い、逢原さん凄い」と騒いでいたから印象に残っている。おそらく、あいつは下手な文化系男子よりも体力は高いと思う。


「(ムニャムニャ……逢原さん)」


 寝ている史郎が『逢原』という単語に反応する。寝ているのに名前に反応するとは、どんだけ好きなんだよ。


 俺はちょっといたずらをしてみる。


「(なあ、知っているか史郎? お前の愛しの逢原ってさー)」

「(う~ん、逢原さ~ん)」

「(実は筋肉ムキムキな男が好きならしいぞー。史郎を振ったのは、お前に筋肉が足りないからだ)」

「(そんな~逢原さ~ん)」


 史郎が悲しそうな声を出す。


「(だが、安心しろ。肉だ、肉を食え。そうすれば、筋肉がついて逢原もお前に惚れるはずだ)」

「(分かった~、お肉食べる~)」


 よし! これで三日とは言わず、しばらく肉料理が食えるぞ!

 俺は笑みをこぼす。


 そうこうしているうちに俺の番が来た。

 順番回ってくるの早いなと思ったら、二人同時に計るようだ。

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