幼い頃のトラウマ

 当時幼かった僕はよく理解できなかったが、クロちゃんが幽霊ではないことと、他の子とは違う新しい友達ができたことは分かった。姿は見えない、僕だけの特別な友達。その存在に、幼い僕は歓喜した。 六歳の僕は嬉しさのあまり、孤児院の皆に自慢もした。先生達、孤児院にいた他の子供達、それはもう盛大に自慢しまくった。


「(当然、即精神科送りにされたけどな)」

「(そのことは言わないでよ。両親の死の次にショッキングなトラウマなんだから)」

「(掘り返しているのは、史郎、お前だろ)」


 まあ、両親を亡くした子供が「僕にはもう一人の僕がいる」なんて言ったら、ショックで気が狂ったと思われても仕方ない。先生達は哀れんだ目で僕を見るし、他の孤児達は僕を嘘つき呼ばわりした。

 幼い僕は必死に否定した、自分は嘘つきじゃない。見えないけど、クロちゃんは本当にいる、そう主張した。

 しかし、誰も信じてくれなかった。唯一、園長先生が僕の話を親身になって聞いてくれたけど、今考えると同情の精神から僕に親切にしただけで、やっぱり信じていなかったんだと思う。

 あの時の彼らの目は、あまり思い出したくないほど、僕の頭にトラウマとして焼き付いている。冷たい視線、遠くから僕を見る白い目、それらは僕の幼心に更なる深い傷をつけた。

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