—10— エピローグ

~翌朝~


 ウィルは外から聞こえる騒々しい騒ぎの音で目を覚ました。なんだろうと思って服を着替えて下に降りていってみると、早速昨日の出来事が王国中に公開され、そのことを聞きつけた街中の人がギルドに依頼をしたいと押し寄せていたのである。ウィルより先に起きていたラスとメルトはそんな人達の対応に追われていた。


「ラスさん、メルト、おはようございます!なんだかすごいことになってますね」


「リアガンさんったら、お前達の活躍が嬉しくて張り切ってしまったとかいって街中に昨日のことを触れて回ったんだそうです。そしたらこんなことになってしまいまして・・・」


「ほんとだよ!この人達もいつもだったら全然依頼なんてしてくれないくせに!急に手のひら返しちゃってさー!」


 こんなことになる原因を作ったリアガンと急に態度を変えた街中の人になんだかラスとメルトは怒っていた。


「はは、良かったじゃないですか!これならギルドやめなくてすみそうですね。」


「ウィルさん・・・本当にありがとうございます」


「それじゃあ俺はこれで失礼します。ラスさんのおかげでディガーの技能検定も取れたし、また仕事を探しながらいろいろと遺跡を巡ってみたいと思います」


 これ以上ラス達の世話になるのは悪いと思ったウィルは、そういってシャムロックを出ていこうとした。しかし、そのときラスに呼び止められた。


「あの、ウィルさんのおかげでなんとかギルドは続けられそうなのですが、・・・あの、その・・・人手が足りてないのでもしウィルさんさえよければなんですが・・・、私達のギルドに入っていただけませんか・・・・?」


 その言葉はラスなりに必死にウィルにここにいて欲しいという思いを伝えたかったようだ。そのような言葉にウィルは


「喜んで」


 とすぐに返事をした。もし断られたらどうしよう・・・と思っていたラスはウィルの返事に表情を明るくした。


「これからよろしくね、”ウィル”!」


「よろしくお願いします、ラスさん」


 ウィルのその言葉に先程まで明るかった表情が若干曇った。


「メルトのことはメルトっていうのに私だけさん付けするんですね。」


 なぜかわからないがラスは拗ねているようだった。その言葉にウィルは困ったような表情を浮かべたが、その後すぐに笑顔で言った。


「これからよろしく、”ラス”」


 その言葉にラスは表情をぱぁっと明るくした。すると一人で依頼の対応をしていたメルトがしびれを切らしたのかウィルとラスに向かって叫んだ。


「ちょっと二人共こっち手伝ってよー!」


こうして今日もこの街に小さな幸せが一つ増えたのであった。



--ウィル編第一章「陽だまりの街と白詰草」 完--

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る